関東地方南部で20年あまり犬の繁殖業を続けてきた女性は数年前、ブームに乗って猫の繁殖も始めてみた。
だが、しばらくすると感染症が蔓延した。
「犬と同じようにいくのかと思ったら全然違った。感染症が一気に広まって、怖くなってやめました」
女性はそう振り返る。
闇へと消える猫たち
業者が廃業しても多くの場合、猫たちは繁殖から解放されない。
廃業は第1種動物取扱業の登録が抹消されることを意味する。つまり、行政の目が届かなくなる。結果、繁殖に使われていた「台雌」と「種雄」の多くは、同業者に横流しされていく。こうした猫たちは、行政に把握されないまま闇へと消える。
さらに、朝日新聞による「犬猫等販売業者定期報告届出書」の調査では、毎年少なくとも5千~7千匹の猫が、繁殖から流通・小売りまでの過程で死んでいることが明らかになっている(原則として死産は含まれない)。ブームは、これだけの数の犠牲の上になりたっているのだ。
このまま猫ブームが続けば、猫たちの過酷な状況はますます広まっていく。もちろんブームにはいつか終わりがくる。ただペットのブームは、終わった後にも悲劇が起こる。大手ペットショップチェーンの経営者はこう話す。
「私たち自身、いまのようなブームがいつまでも続くとは思っていません。毎年、『今年が山場だろう』というつもりでいます。一方でこの数年、高く売れるからと、各ブリーダーとも子猫の繁殖数を大幅に増やしている。そのため、かなりの数の繁殖用の猫を抱えてしまっています。ブームに陰りが見えて子猫の販売価格が下がり始めたら、増やしすぎた繁殖用の猫たちがどうなってしまうのか、行く末が懸念されます」