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 前述の通り、スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症は優性遺伝する疾患だから、折れ耳同士で繁殖すれば75%以上の確率で折れ耳の子猫が生まれる。折れ耳と立ち耳とで繁殖した場合でも、50%以上の確率で折れ耳が生まれる。販売されている「折れ耳の子猫」の側から見ると、両親または片親は必ず折れ耳だということになる。

 つまりペットショップの店頭に折れ耳のスコティッシュフォールドがいる時点で、飼養管理基準省令が禁じる繁殖が行われたことは明らかなのだ。動物愛護法に照らせば、折れ耳のスコティッシュフォールドの繁殖は認められていないと解するべきだろう。

©AFLO

 実際、国会でも問題になった。2022年5月11日に開かれた参院消費者問題特別委員会。環境省の松本啓朗・大臣官房審議官はスコティッシュフォールドの繁殖について「規制の適用のあり方を検討する」と述べ、今後、専門家や動物愛護団体、ペット関連の業界団体などから知見を集めていくことを明らかにしたのだ。福島瑞穂氏(社民)の質問に答えたものだった。

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 福島氏は21年6月から施行されている飼養管理基準省令で「遺伝性疾患等の問題を生じさせるおそれのある組合せによって繁殖をさせないこと」と定められていることなどから、「(折れ耳については)繁殖を避けることを検討すべきだ」などと質問した。

自治体、消費者、メディアの問題

 松本氏は、スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症は遺伝性疾患であるという報告を把握しているとしたうえで、「基準(省令)に反することは動物愛護、動物福祉の観点から考えて望ましくない。折れ耳のスコティッシュフォールドの繁殖規制の適用のあり方について獣医師関係団体、動物愛護関係団体、ペット業界団体などの知見と意見をよく聞きながら、検討していく」という考えを示した。

 ところがペットショップの店頭ではいま現在も平然と、折れ耳のスコティッシュフォールドが売られている。ペットショップの経営者たちはその繁殖が飼養管理基準省令に抵触していることを認識し、一刻も早く仕入れ、販売をやめるべきだろう。

 繁殖業者やペットショップなどを監視・指導する地方自治体が、この状態を放置していることも問題だ。店頭に折れ耳のスコティッシュフォールドがいれば、行政はその仕入れ先を確認し、繁殖業者に対して改善するよう勧告、命令すればいい。その繁殖業者が命令に従わなければ当然、業務停止命令や登録取り消しといった処分の対象になる。

 消費者もよく考える必要がある。消費者が「人気の折れ耳」に飛びつくから、業者は繁殖、販売する。もちろん、人気をあおるマスメディアの罪も重いと言わざるを得ない。

 子犬、子猫の段階で症状があらわれる遺伝性疾患はほかにもいくつかある。そうでなくても、検査方法が確立されている遺伝性疾患は、繁殖段階で発生を抑えることができるものだ。業者、行政、消費者、メディアが一体となって、この事態を解決していかなければならない。