「犬を使い倒す」業者たち
繁殖業者のなかには、母体がボロボロになり、繁殖能力が衰えるまで繁殖を続けさせるところが少なくない。そうなってから引退させても、もう、犬らしい生活を楽しむことは難しい。「ブリーダーのところにいる犬たちに、家庭犬のような幸せはない。だからなるべく早く引退させて、普通の家庭で幸せになってほしいのです」。引退させた犬たちは動物愛護団体に譲渡し、新たな飼い主を探してもらっているという。
女性なりに最善を尽くしている一方で、同業者の劣悪な飼育事情を見聞きすることも多いと、眉をひそめる。ある繁殖業者は、脚に問題があって売れない子犬を、動物病院に持ち込んで安楽死させようとした。
また別の繁殖業者は、不要になった繁殖犬を「埋めてるんだ」と話した。女性が「どうやってるの?」と尋ねると、「農薬使ってんだよ」と明かしたという。
繁殖犬の早い引退をすすめても、耳を貸そうとする同業者はほとんどいない。「8歳くらいならぜんぜん平気だよ」と話し、犬が歩けなくなっても繁殖させ続け、「年を取った犬を使い倒す」繁殖業者は少なくない。
ケージや施設内をほとんど掃除せず、毛や糞尿だらけの環境で飼っている繁殖業者もいる。犬種がわからないほど汚れていたり、体中に毛玉ができたりしたまま放っておく繁殖業者もいる。女性はこう話す。
「犬はお金になって、それで生活していけるから仕事を続けているのだろうけど、劣悪な飼育環境で繁殖を続けているブリーダーは本当にやめてほしい。そもそも、そういう劣悪なブリーダーを、行政はしっかり取り締まるべきです。また市場も、出入りしているブリーダーをすべて検査したうえで、出入りできる基準を厳しく決めればいい。そのうえで、私たちブリーダーは次の段階にいかないといけない。私自身は、できることはやっているつもりですが、ほかに改善できることがあるなら直したい。どうすればいいのか、国や行政に教えてもらいたい」