環境省の調査報告書によって、全国のペットオークション会場で、動物愛護管理法で禁止されている「生後56日を経過していない子犬や子猫の売買」が常態化していたことが判明した。

 オークション会場で売買される子犬や子猫には生年月日を偽った様子が見られ、トイプードルとチワワの平均体重は生後56日時点での平均体重よりかなり軽かったのだ。

ペットオークションの様子。1頭あたり数秒で値段が決まっていく

 ペットショップでは、幼く小さな子犬や子猫の方が消費者からの人気が高く、高値がつく。また子犬や子猫は生後40日を過ぎた頃から、母親の初乳でもらった抗体が徐々に減り始め、免疫力が低下しいろいろな感染症にかかるリスクが出てくる。そのためにワクチンを打つのだが、長くやっているブリーダーほど、免疫問題を避けながら高く売るため生後56日を迎える前に子犬や子猫を出荷したがるのだという。

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 欧米では、生後8週齢以下の幼い子犬や子猫が親や兄弟から引き離されると、噛み癖や吠え癖といった問題行動を起こしやすくなるという研究結果が多数出されている。それを踏まえて日本でも法律で生後56日以前の販売は規制されているが、現場では守られていなかった。

「誰の犬や猫が一番高く売れたのか、そればかり気にするブリーダーは多い」

 このような法令違反が、なぜブリーダーやオークション会場で起きているのか。調査報告が行われたペットオークション会社19社のうち15社が会員となっている一般社団法人ペットパーク流通協会の会長、上原勝三氏に「生後56日規制」問題やその現状について話を聞いた。

ペットオークションが行われる会場

「ブリーダーも規制に対する意識が分かれている。意識の高い人と、ルールをまるで気にしていない人では対応が分かれてきた。意識の高い人はすでにスマホで記録写真を残して生年月日が確かめられるようにしています」

 実際、オークション会場では複数のブリーダーから、出荷した子犬の誕生からの成長記録の写真を見せてもらった。

 一方で、法律をまったく気にしないブリーダーはなぜ発生するのだろうか。

「オークションで誰の犬や猫が一番高く売れたのか、そればかり気にするブリーダーは多いです。やっぱり小さい子が高く売れて、同じ品種の同じ色でも、小さい子と大きい子では値段が数倍違ってくる。それで昔からの商習慣を変えようとしないんです。違反が続くブリーダーを出入り禁止にしても『いいですよ、他にいくから』と逆に強気に出られてしまう」(同前、以下同)