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 さらにペット業界を混乱させたのは“天然記念物の日本犬”の特別扱いだった。「56日規制」が実現する直前に、なぜか天然記念物に指定されている日本犬6種(柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、秋田犬、北海道犬)だけが、規制から外されたのだ。

オークション会場の様子

 ブリーダーが伝統的に店頭販売しないというのが主な理由だが、上原氏はこの特別扱いを「歪んでいる」と表現する。

「突然、日本犬だけ7週齢(=49日)での売買が可能になった。超党派の動物愛護議連も押し切られたようで、天然記念物を守るために同じ要件ではやらないと言い出した。だが犬は犬だ。なぜ日本犬だけなのか。この法令は決めた時点から歪んでいる」

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 たしかに、天然記念物の日本犬を大切にする目的なのに、生後早い段階での販売を許可するのはよくわからない。この法律は議員立法で、日本犬保存会会長は当時、衆院議員だった自民党の岸信夫氏、秋田犬保存会会長は衆院議員で日本維新の会の遠藤敬氏だ。

「310gのティーカッププードルとか、800gのチワワとか」

 官庁や行政のあいまいな動きに対し、上原氏の「ペットパーク流通協会」は独自基準を2つ設定することで対応しようとした。

「門歯と体重のチェックを自主ルールとして運用することにしました。門歯がしっかり生えていれば固いフードを食べることができる。フードが食べられるぐらいになっていないとショップも困るし、体力的な問題もある。門歯を見ることで週齢を担保してきたが、個体差や種類による差は当然あり、プードルやマルチーズは門歯が生えてくるのが遅い傾向があり、正確な週齢を把握できるとは限らない」

会場に示された、生後の日数を歯で判断するという告知の張り紙

 体重のチェックについて、オークションでは過去のデータから出荷時の平均体重を犬のサイズで極小から特大まで5段階に分類した上で、犬種によっても基準を定めた。

「体重は8週齢でも犬種やサイズによってばらつきが大きい。310gのティーカッププードルとか、800gのチワワとか。過去の出荷時データを分析し、自主規制の平均体重を見直して『56日』換算の新基準を設定し、適用しようとしていたところだった。今後はこの新しい出荷体重を基準にチェックすることになる」