とはいえ門歯の生え具合と体重で小さい子犬を見つけられても、ブリーダーが8週齢だと主張すればオークション側にはそれを確認する方法がない。ブリーダーに対して違反していないかどうか聴取する義務が課せられているが、それ以上の権限は彼らにないのだ。
「今は出生時と、その後の成長を写真で記録するシステムを開発している。子犬や子猫が誕生した時から写真を撮影し、オークション側のシステムにそれを登録して、成長を記録する仕組みだ。一度登録すれば出生日の変更はできない。ただこれだと、高齢のブリーダーが登録できない可能性がある。彼らを取りこぼさないために、獣医師が発行した出生証明書で生年月日を証明することもできるようにする」
だがブリーダーお抱えの獣医師が発行した出生証明書の信憑性を確認することはやはり困難だ。
「子猫の8週齢違反はほとんどないと思う」
ここまで子犬の話が続いたが、子猫はまた事情が異なるという。
「オークションで、子猫の8週齢違反はほとんどないと思う。子猫は子犬とは違って昔から大きな子が買われていく傾向がある。小さいとちょっとしたことで体調を崩して亡くなりやすい。離乳が終わっていない子は体力がないし、病気になると治療費がかかる。バイヤーたちはリスクを取りたくないから、できるだけ大きな子を買っていく」
「詐欺の業界といわれたままでは、子供や孫に誇れる仕事にはならないのでクリーンにしたい気持ちはある。新しい自主ルールを周知徹底させるのは難しいが、法律で決まったことはしっかりやる。ただ、正直者がバカを見る状態にするのもダメだ。私たちのオークションの売上が半分になるだけならともかく、規制のゆるい所へ逃げて同じことを続けるようでは意味がない。業界全体でなんとかしようとしないとダメだが、オークション会社もネット販売の業者もなかなかまとまらないのが現状」
上原氏は最後にこう付け加えた。
「犬猫でみんな稼いできたのだから、その犬猫の面倒を最初から最後まできっちり見るのが業界の役目だ」
とはいえペット業界は全体を指導し、率先して牽引していくような力のある組織がないのが現状で、政治が大きな役割を果たさなければ、法令違反が横行する現状を変えることは難しいのが現実だろう。