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 立会人の青野照市九段、新聞解説の森内俊之九段と検討する。先手2歩損、つまり歩の数が7対11と、4枚の差がある。しかし、それでも先手には自陣馬の手厚さ、後手は3三金型のまとめにくさがあって、先手のほうが戦いやすい。永瀬の研究の深さに皆が感心する。

控室で検討する青野照市九段(左)と森内俊之九段(右)

攻めに転じた永瀬九段に対して藤井王座の巧みな攻めが…

 駒組みの途中で昼食休憩となった。メニューは両者とも名物の「陣屋カレー(伊勢海老)」である。相変わらずボリュームがすごい。休憩時に対局室に入ると、うわっ、さむっ。記録係の田中大貴三段に聞くと、「朝から設定温度は22度でした。寒いです」とのこと。2人の平常運転だ。

寒さを感じた対局室。二人の「熱戦」の証

 休憩あけに先手の桂が跳ね、控室では同様に後手も右桂を跳ねる手を検討していたが、藤井はそのマス目に角を打った。永瀬の馬を受ける位置である。

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 えっ、馬vs生角では後手辛いのでは? 角打ちを見て永瀬は30分以上考え、馬をじっと一つ引いた。

 銀交換の後、藤井は端攻めを開始。永瀬は飛車取りに銀を打って攻めを封じにいく。藤井の表情が厳しいが、永瀬の表情も厳しい。両者苦戦といった雰囲気だ。

 さあ7筋に銀を成り返って受けに回るか、と思いきや、永瀬の手は左ではなく右に伸びた。なんと2筋の継ぎ歩攻め。受けの棋風の永瀬がここで攻めに転じるとは。森内は「永瀬さん、棋風が変わりましたねえ」とつぶやいた。

 藤井は角をふわっと浮き、端では香と桂を交換して手を戻す。永瀬は取った香を2八に打って大小の車をタテに並べ、2筋の数の突破を見せた。だが、ここからの藤井の攻めが巧みだった。

写真=勝又清和

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