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運転士によって新幹線の使用電力が変わる?

 一見すると運転士の仕事は「数字を合わせるだけ」に見えるが、実はそうではない。

 列車によって最高速度が異なるし、乗客の数によって加減速の勘所も違ってくる。なので運転士は列車ごとの運転パターンや、列車の重さによる加減速の癖も覚えるなど経験を重ねていく必要がある。

 運転士が判断基準にするのは、通過駅ごとに定められた時刻だ。「A駅を○時○分○秒に通過した。B駅を□時□分□秒に通過するためには、時速△△△kmで××分走ればいいんだな」と、常に計算しながら走っているという。駅間ごとに何回も計算しているそうだ。

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 なので運転士の技術によっては、同じ時刻で通過しても電力使用量が異なることがある。急加速や急減速をすれば当然電力の使用量は増える。そこが運転士の技の見せどころなわけだ。

JR東日本が開発した自動運転による運転パターン
(出典:JR東日本ニュース「新幹線にドライバレス運転を導入します」)
JR東海が開発中の自動運転制御の仕組み。JR東海が実施した報道公開時の資料

現在の自動運転の実力を体感すべく乗ってみると…

 2023年5月、JR東海は自動運転列車の走行試験を報道公開した。この時の自動運転は運転士が乗務したが、仕事は発車スイッチを押すだけ。列車の走行中は前方と機器の見守りだけ行った。

 あらかじめ途中の駅の通過時刻を設定しておけば、あとは定時に通過できるように列車の速度を機械が調整してくれるのだ。走行中に天候や安全確認のため減速した場合も最適な速度を維持し続けるという。人間の運転士が「何回か」実施する計算を、機械は走行中ずっとリアルタイムで行い、速度を調整しているという。

 自動運転の試運転は、浜松から静岡までの往復だった。私も乗車したが、ふだん乗っている列車と変わらない乗り心地だった。

©︎AFLO

 東海道新幹線は駅に到着する時間の誤差の許容範囲は定時の前後15秒以内で、停止位置は規定の前後50cmまでとしている。私が試乗した列車は、浜松から静岡までは予定時刻より2秒早く、停止位置の誤差は0.9cm。静岡から浜松までは2秒遅く、停止位置の誤差は12cmだった。きわめて優秀と言えるだろう。