仕事をするうえで大切にしている「閉じきらないこと」
あるいは、別のインタビューのなかで「仕事をするうえで大切にしていること」について聞かれた米津は、周囲に対して「閉じきらないこと」と語った(『日曜日の初耳学』TBS系、2024年8月25日)。それはひとつに、幼少期から閉じこもりがちだったという自身に対する一種の警句なのだろう。しかし、「閉じないこと」や「開くこと」ではなく「閉じきらないこと」というあいまいにも聞こえる言葉の選択には、能動的とも受動的とも言い難い米津にとっての創作のあり方が見て取れるようにも思う。広く多くの人に届くポップスを志向する米津は、「閉じきること」を避け、かといって自他の境界を消すような「開ききること」にも向かわず、「対面」にいる「あなた」と「私」との対話へ向かう。
「対面にいる人間だとかそういう人たちに、『私はこういう人間だけどあなたはどう?』っていう、そういうことを一つひとつ繰り返していかないと、やっぱ広く届く音楽もつくれるはずがないと思いますし、すごく大事にしなきゃいけないことだなとは思ってますね」(同前)
対面にあるものから影響を受けたい
だとしたら、タイアップもまた、そのような「対面」の機会としてあるのかもしれない。たとえば、ドラマ『MIU404』(TBS系)の主題歌『感電』について米津は、「対面にあるものからものすごく影響を受けたいんですよね」と前置きしつつ、「なるべくそれに染まりたいというか。『MIU404』がなければ、『感電』っていうのは絶対生まれてこなかった」と語っていた(『MIU404特別企画』TBS系、2020年8月8日)。
では、米津は『虎に翼』といかに「対面」したのか。