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ジャンプ作品は1~3話に一番見せたいテーマが込められている

  対して、高専を舞台にした学園ドラマ+異能力バトルという物語は、ジャンプ漫画の必勝パターンを忠実になぞっているように見えるが、作者のこだわりが他の作品とは全く違うように感じた。

  よく知られている話だが、ジャンプ漫画の連載は1~3話までのネームを企画会議に提出し、そこでOKが出たら連載が決まるという仕組みになっている。

  そのため、1~3話には、その漫画の一番見せたいテーマが込められているのだが、では『呪術廻戦』は1~3話で何を描いていたのか。

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「第1話 両面宿儺」は、主人公の虎杖悠仁が通う高校に、呪術師の伏黒恵がやってくる場面から始まる。学校に封印されていた特級呪物・両面宿儺の指を回収しようとした伏黒だったが、宿儺の指は虎杖が所属するオカルト研究会(以下、オカ研)の部員の手に渡っており、部員たちの手で宿儺の指の封印が解かれてしまったことで、学校に呪霊が押し寄せる。

  強力な呪霊を倒すために虎杖は宿儺の指を体内に取り込むことで、呪力を獲得し呪霊を倒すのだが、その結果「宿儺の器」となってしまい、呪術師から命を狙われる立場になってしまう。

伏黒恵(『呪術廻戦』PVより)

「オマエは大勢に囲まれて死ね」「俺みたいにはなるなよ」

  少年が巨大な力に目覚め、その力で怪物を倒すという少年漫画によくある展開だが、一方で丁寧に描かれるのが、虎杖と祖父の関係だ。

  祖父は病院で亡くなる間際に、お前は強いから手の届く範囲でいいから救える人間は救えと言った後「オマエは大勢に囲まれて死ね」「俺みたいにはなるなよ」と遺言を残す。

  祖父の死後、伏黒から呪霊の存在を知らされた虎杖は、オカ研の仲間を呪霊から救うために夜の学校に向かうのだが、そこで虎杖は寿命で亡くなった祖父の死を「正しい死」、呪霊に殺される理不尽な死を「間違った死」だと思い、伏黒と共に呪霊と戦う決意をする。

「正しい死」を虎杖に植え付ける祖父の死(『呪術廻戦』PVより)

「第2話 秘匿死刑」では、宿儺の器となった虎杖が、呪術師の五条悟から「今すぐ死ぬ」か、日本中に散らばる宿儺の指を「全て取り込んでから死ぬか」という二択を突きつけられるのだが、虎杖は祖父の遺言に従い、呪術師として宿儺を祓うため、呪術高専に入学する。