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「佐藤黒呼かよ」を筆頭とする『幽☆遊☆白書』へのオマージュたち

  また、高校生になって身長が15cmくらい伸び、東京に来た環境の変化によるストレスで痩せたという小沢に対して、虎杖の仲間の釘崎野薔薇が「佐藤黒呼かよ」と軽くツッコミを入れる。佐藤黒呼とは冨樫義博の漫画『幽☆遊☆白書』(集英社、以下『幽白』)に登場するキャラクターである。

釘崎野薔薇(『呪術廻戦』PVより)

  黒呼は中学の時は太っていたが、その後、身長が伸びて体重はそのままだったため、痩せた体型になった、というキャラクターだ。その意味で『呪術廻戦』の小沢は黒呼へのオマージュと言える回だが、こんな細かいエピソードをよく引っ張ってきたなぁと感心した。

  1990~94年にジャンプで連載された『幽白』は、霊界探偵の浦飯幽助が仲間と共に妖怪と戦うバトル漫画で、鳥山明の『DRAGON BALL』と井上雄彦の『SLAM DUNK』と並ぶ90年代前半のジャンプを代表する大ヒット漫画として語られることが多い。

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  しかし『DRAGON BALL』と『SLAM DUNK』が万人が楽しめるジャンプ漫画としていち早く古典化したのに対し、『幽白』は古典化を拒むような、独自のカルト感が漂っていた。

『幽白』は、ジャンプ漫画の「特級呪物」だった

 『幽白』というと、バトル漫画として盛り上がる暗黒武術大会編が語られることが多いが、本作がカルト化したのは仙水忍が登場する魔界の扉編からだ。

冨樫義博の漫画『幽☆遊☆白書』(集英社)

  かつて幽助と同じ霊界探偵だった仙水忍は、人間が妖怪を虐殺する光景を見たことで人類に絶望し、人間界と魔界を繋げて人類を滅亡させようと目論む。

  魔界の扉編は、人間に対する絶望と不信が全面に打ち出された暗いエピソードで、物語の暗さに引きずられたのか、絵柄も不安定で禍々しいものへと変わっていった。

  その後、唐突に最終回を迎えた『幽白』は、綺麗に物語を終えることができなかったため「途中で破綻した失敗作だ」と言う人も多い。だが、漫画としての完成度を超えた禍々しい魅力が『幽白』には存在する。先鋭化した絵柄の奥に、週刊連載でボロボロになった冨樫の心境が見え隠れする私小説的な漫画として、当時の読者に「呪い」を残した。

  言うなれば『幽白』は、ジャンプ漫画の「特級呪物」とでも言うような作品だった。

  そんな『幽白』の残した「呪い」を喰らい、両面宿儺=冨樫義博の作風を自分のものとしてどこかで取り込むことができるかという戦いに、芥見は『呪術廻戦』で挑んでいたのではないかと思う。