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夏油傑が闇堕ちしていく姿は、仙水忍と重なる

  だから『呪術廻戦』を読んで一番強く感じたのは、当時の『幽白』が持っていた禍々しい気配だ。中でも、五条悟の親友の呪術師・夏油傑が闇堕ちしていく痛々しい姿は、仙水忍の姿と重なるものがあり、他のシーンを見ても『幽白』の設定や絵柄を引用している場面が目に付く。

夏油傑(『呪術廻戦』PVより)

  おそらく前半の山場となる「渋谷事変」編までは、かなり意識的に『幽白』終盤をなぞろうとしていたのではないかと思う。「死滅回游」編になると物語のトーンが少し変わり、芥見自身の持ち味である不思議なユーモアが滲み出るようになるのだが、それでも『幽白』や冨樫義博の気配は、最後まで消えなかった。

  かつて『幽白』は、少年少女に大きな「呪い」を残した。『呪術廻戦』もまた、新たな特級呪物として現代の少年少女に大きな「呪い」を残すのではないかと思う。