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『虎に翼』のメインテーマである男女の地位や関係性、という問題も『タイバニ』に登場している。

 女性ヒーローのブルーローズに対して、男性ヒーローが無意識に「守る存在」扱いをするが、後に考えを改めてこう話す。

「ずっと思ってたんだ。俺がブルーローズを守らないとって。相棒はその……女なんだしって。相棒は相棒。男も女も関係ねえのに」

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「姫の相棒の俺が一番わかってなきゃいけねえのにな。ブルーローズは誰より強くて熱くて最強のヒーローだって。守るんじゃなくて助け合う、男も女も上も下もねえ、それならいいだろ、姫?」

 これは『虎に翼』で何度も描かれた寅子たちの怒り――女だからといって特別扱いしてほしいわけじゃない、守ってほしいわけじゃない、結婚や妊娠をしたからといって、「妻」や「母」扱いしないでほしいというメッセージそのものだ。

伊藤沙莉演じる主人公・寅子(NHK『虎に翼』公式Xより)

『タイバニ』のセリフが、寅子のセリフに見えてくる

『タイバニ』最大のテーマである「ヒーローとは何なのか」という問いに虎徹が答えたセリフは、語尾を変えれば寅子のセリフにさえ見えてくる。

「ヒーローって、強い弱いってのは極論関係ねえんじゃねえかな。困ってる誰かを見たとき、自分を顧みず前に立っていけるかどうか、そしてそいつに街を任せられるって思ってもらえるかどうか。仲間に、街のみんなに、自分自身に」

 寅子が目指したのは法曹として「人の盾になる」ことであり、「人が人らしくあるための、尊厳や権利を運ぶ船。社会という激流に飲み込まれないための船」になることである。そんな寅子に通じるヒーロー論だろう。

『TIGER&BUNNY』でも『虎に翼』でも、そして他の作品でも吉田が繰り返し描いているのは、“出涸らし≒衰え”と“世代交代”、そして様々な差別だ。「色恋だけが人生じゃない」という価値観も通底している。

「虎に翼」放送中から数多く応じたインタビューの中で吉田は、自分がバトンを渡す側の立場になったこと、子どもを持ってその思いが強まったことを語っている。

 自身の問題意識をエンタメにのせ、多くの人に届けたいという思いが『TIGER&BUNNY』になり、そして『虎に翼』になった。吉田の原点であり、純度の高い思いに触れる作品として、ぜひ『虎に翼』ファンはチェックしてみてほしい。