朝ドラ(NHK連続テレビ小説)をこれまで観たことがなかった層まで巻き込み、高い熱量で支持された伊藤沙莉主演の『虎に翼』(通称「トラつば」)。「透明化されている人をエンタメで描く」という脚本家・吉田恵里香のスタイルもすっかり有名になった。
放送終了前から“トラつばロス”を抱える人向けに、NHKは同じく吉田恵里香脚本の『恋せぬふたり』(2022年)を再放送している。
しかし、最も「トラつば」に近く、吉田脚本の原点と言えるのがデビュー作の『TIGER&BUNNY』(通称「タイバニ」)だ。
2011年のTVシリーズ1期は全25話中吉田の名前がクレジットされているのは2話だけだが、2022年の2期では10話に参加している(シリーズ構成は西田征史)。
吉田自身も「私の脚本家人生の大半はタイバニと共にありました」(ステラnetの連載コラム11回)と、ことあるごとにタイバニの存在の大きさを語っている。
アニメ×ヒーロー物×BL消費と、一見『虎に翼』とは全然違うが…
『タイバニ』は、近未来を舞台に個性豊かな特殊能力者がヒーローとして平和を守るといういわゆるヒーロー物で、落ち目のベテランヒーローと、ワケアリの生意気な若手イケメンが主役のバディものでもある。
また、2000年代からBL好きの女子にも人気だったドラマ『相棒』シリーズの「中年男性×後輩イケメン男子」の“オヤジBL”をアニメに持ち込んだエポック的な作品でもある。
アニメ×ヒーロー物×BL消費と聞くと興味を失う朝ドラファンも多そうだが、『虎に翼』との共通点が多すぎるので食わず嫌いはもったいない。『虎に翼』ロスならばきっと『タイバニ』も気に入るはずだ。
『タイバニ』の主人公“ワイルドタイガー”の本名は鏑木・T・虎徹。名前からすでに寅子要素が漂っている。とりわけ初めて吉田恵里香の名前がクレジットに登場する1期の第15話は、吉田節が凝縮された回である。
この回は主人公の先輩のナンバーワンヒーロー・スカイハイが主役で、全体の流れの中ではスピンオフ的な位置づけである。