人はどう老いて死んでいくのか……。誰にとっても初めてとなる体験にあわてないためには、予習が必要だという。多くの死を看取ってきた医師で小説家の著者が、死をリアルに描きベストセラーとなった前作『人はどう死ぬのか』に続き、今作では上手に老いるコツを率直に語っている。
「世の中にはいつまでも健康で長生きするための情報があふれています。しかし老いは誰にも止められないし、死はどんな名医にも治せない。そのことを理解していないと、実際に老いて死が迫ったとき、葛藤が生じて苦しむことに。現実を恬淡と受け入れ、先手で納得のいく選択ができることを願って作りました」(担当編集者の髙月順一さん)
認知症にだけはなりたくないと思いがちだが、当事者になってしまえば病気を認識できないから、案外悪い状況ではないと、豊富な実例とともにユーモラスに綴られる。体が不自由になってもリハビリで元通りになると考えるのは医療への過大な期待であるとか、治療効果がなくても使用期限の迫った薬を処方されることがあるなど、愕然とするような現実も。「努力で困難に打ち勝ってきた優秀な人ほど老いに抗うが、受け入れて付き合っていくことで平穏になれる」とあきらめの効用を説く。女性読者も多く「気が楽になって、不安から解放された」という声が届いているそうだ。