「無我」「空」「他力」などの東洋哲学の魅力的な概念を極めて柔らかく綴った哲学エッセイ本だ。しかし著者は、学者でもなければ僧侶でもない。小さな田舎町で神童として育ち、長じて東京大学法学部に入学。卒業後は大手IT企業に入社したが、仕事がまったくできずに退職。そこから苦難が始まる。離島に移住して教育事業を立ち上げようとするも上手く行かず、一発逆転を狙って芸人になり、R-1グランプリ優勝を目指すも1回戦で敗退し引退。30代にして無職になり、引きこもっていた最中に出会ったのが東洋哲学だった。
その出会いの衝撃をネット上に書いたところ、話題を集め、本書の企画に繋がった。こうした出版の経緯や、タイトルや装丁のポップさから、内容に不安を感じる人もいるかもしれない。しかし、心配は無用だ。
「東洋哲学の世界にのめりこんだ著者は、企画成立から刊行までの3年半で1000冊以上の文献を読み込んでおり、それだけの知識が本書には凝縮されています。東洋哲学は一歩解釈を間違うと危うい、センシティブなテーマであることもよく理解されていて、監修をこの分野に詳しい京都大学名誉教授の鎌田東二先生にお願いしたのも、著者の希望によるものです」(担当編集者の大川美帆さん)
生き方に繋がる内容は、高齢者はもちろん、小学生にまで届いているそうだ。