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6時間26分の激闘の末に…

尾崎 初めて行った試合が、(巨人の)原辰徳さんがバットを投げたあの試合でした(註:1992年7月5日、ヤクルト対巨人戦)。あとは夜中の11時半とか12時近くまで試合が長引いた時に、深夜まで起きてラジオを聴いていた記憶が強く残っています。昔は延長15回までだったので、甲子園の阪神戦で、八木(裕)さんのホームラン判定が覆って長引いた試合(註:1992年9月11日、阪神対ヤクルト戦)なんかもありましたよね。

――6時間26分の激闘の末に、延長15回引き分けという史上最長試合ですね。ラジオで聴いていたというのは、尾崎さんの原風景なんですね。

©文藝春秋

尾崎 もちろんテレビも見ていましたが、ラジオ中継を聴くのが好きでした。ニッポン放送ショウアップナイターの試合経過を伝えるチャイムがあるんですが、あの音を聞きながら、開け放したベランダから生ぬるい風が入ってくる……というのが夏の記憶です。

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――野球の「音」が生活の中にあった。

尾崎 子どもの頃からラジオ中継を聴きながら今試合がどうなっているかを想像していたので、そのことが創作に役立っている面はあるかもしれません。

青木宣親選手と肩を組む尾崎世界観 ©深野未季/文藝春秋

 昔はラジオ中継が商店街の色々な店で流れていたので、歩いているだけでプロ野球が聞こえてきました。

――ないとは思いますが、野球の音に発想を得て曲を作ったりしたことはあるのでしょうか?