その懸念通り、2着に惜敗したダービーと同じく最後方からのレース展開に。4コーナーでも外を回らされ、「なんと、負けたか!」と感じた直後、直線で脚を伸ばすと前をまとめて交わしGⅠ4連勝を果たした。
次走で秋の天皇賞を制したこの馬の勝ち時計は1分55秒2。先行勢が総崩れする中、別次元の末脚を見せてのレコード勝利。トーセンジョーダンが持っていた従来のレコードを0秒9も更新。この記録は芝2000mでの世界レコードとされている。
ラストランのジャパンCでは、三冠牝馬のリバティアイランドと初対決となった。
このレースではリバティアイランドが優勢だと感じてならなかった。同コース同距離のオークスでは2着を6馬身チギってみせた。同じ三冠牝馬のジェンティルドンナとアーモンドアイはオークスを2分23秒台で勝ったが、この馬の勝ち時計は2頭をコンマ5秒以上も上回っている。
牡馬と牝馬の三冠馬対決は過去に2回あった。2回ともジャパンカップであり、ジェンティルドンナはオルフェーヴルに、アーモンドアイはコントレイルに先着。いずれも牝馬三冠馬が牡馬三冠馬を破っている。特にジェンティルドンナはオルフェーヴルとの4キロ差を活かし、マッチレースに持ち込むとハナ差で先着した。加えて近年は牝馬が強い時代でもある。レース前はリバティアイランドが優位に思えてならなかった。
しかし、イクイノックスの脚は別次元で、4キロ差の三冠牝馬を4馬身もチギってしまった。しかも、このレースで3着だったスターズオンアース、4着だったドウデュース、5着だったタイトルホルダーは、次走の有馬記念で揃って上位を占めている。
このことは、ジャパンCのレースレベルを証明するものだろう。
数多くのレースを目にしてきたが、このジャパンCのゴール直後は口がポカンと開いたままだった。シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラック、アーモンドアイとGⅠ7勝以上の名馬がいずれも勝利してきたジャパンCで、言葉が出ないほどの衝撃を受けてしまった。
ここからは夢想の話だが、前記したGⅠ7勝以上馬が同じレースを走っても、イクイノックスに勝てる馬はいない気がする。
3番手を追走して2分21秒8、加えて上がりタイムは33秒5。ディープインパクトが勝った2006年と上がりタイムは同じだが、同馬は2011番手からの差し切りであり、3番手から先行して同じ上がりをマークしている。
3年後の夏にはアーモンドアイとの仔が…
GⅠ勝利数ではアーモンドアイやディープインパクトらに届かなかったが、GⅠ6連勝を果たしたのはテイエムオペラオー、ロードカナロアに次いで史上3頭目。無敗でGⅠのみ6連勝を遂げたのは日本競馬史上唯一の大記録となった。
引退後の種付け料は2000万円。アーモンドアイとの配合も決まった。3年後の夏、2頭の仔はどんな走りを見せてくれるのだろう。