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ただし、お寺らしい突発的な事情で、どうしても夕食が作れない日がある。檀家さんが亡くなった時である。十八時からの通夜であれば、十七時ぐらいから支度して出かけ、読経を終えて帰ってきたら十九時を過ぎる。調理に費やす時間がゴソッと抜けるので、お通夜が入った時ばかりは、帰りがけにマクドナルドのドライブスルーでハッピーセットを買って戻ってきてもよいルールにした。
「お通夜の日」が2人の子どもたちの楽しみに
事情がわからない子供たちは素直なもので、「今日はお通夜が入った」というと、「マックの日だ!」と目をキラキラさせて喜ぶようになった。「こら! 檀家さんが亡くなってるんだぞ」と不謹慎な発言をたしなめたが、まだ身内の死を体験したことのない子供に理解が及ばないのも仕方ない。お通夜で放ったらかしになる時間、寂しさと空腹をこらえて待っていてくれるのだから、二人にとってはささやかな楽しみだと思った。
そのような例外を除けば、外食は月一回だけと決め、他の日は原則として、私が料理を作る。野菜を刻む時間を省略するために、生協が届けてくれる食材セットを使うこともしょっちゅうだが、レトルトや冷凍食品は使わず、必ず自分できちんと火を通して調味するルールにした。そして、キッチンで調理をしている食事前の時間を積極的に活用して、宿題を見たり、子供と他愛ない話をしたりするように努めた。