過去の自分が殺しに来る。以前読んだ雑誌にあった言葉だ。ひとことで言うならおじさんのアップデートについてだった。おじさんは過去の自分と直面させられることもあるはず。ならば開き直るのではなく、せめて今日からは変わろうとするしかない。おじさんの分岐点について考えさせられた。

 さてそんな意味とは別に「過去の自分が殺しに来ている」のが石破茂氏ではないか。

石破茂総裁 ©時事通信社

 自民党総裁になった直後、私は石破氏がこれから戦うのは野党ではなく過去の自分だろうと思った。今までの党への批評や提言を実行できるかチェックされるからだ。

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 すると、ブレにブレた。石破氏は総裁になる前は解散総選挙について国会論戦が重要とし、早期解散に慎重だった。ところが、総裁になった途端に衆院選を「10月27日投開票」とする方針を表明した。さっそく“自民党に取り込まれた”のである。

 10月4日には『裏金議員を原則公認へ 首相、比例重複も容認 衆院選』(朝日新聞)と報じられた。総裁選の最中には公認しない可能性も示唆していたので、ここまで変わるかと感嘆すらした。

「ブレません」と言った“重要政策”も...

 政策に目を向けると、石破氏は「日米地位協定の見直し」について言及していた。私は総裁選翌日にジャーナリストを招いてライブをやったのだが、ライブ中に石破氏に電話がつながり「日米地位協定を本当に見直しますか、ブレませんか」と問うと石破氏は「ブレません」と言った。

©時事通信社

 しかし、所信表明演説では日米地位協定には触れなかった。選択的夫婦別姓については導入に前向きな考えを述べていたが、公明党との連立政権合意では記載が見送られた。

 かなりのヨロヨロ具合だが、実はこの展開は予想できていた。