政界で活動する人物たちを、長年ウォッチしてきたからである。よく「政局より政策を!」と言う。当然だと思うが、人の動き(政局)も見ておかないと政策もわからない。政策だけを見ていたらコロリと騙される。政局を通じて人物を見ておくのも大切だ。
石破氏の「優柔不断さ」が予想できた、あの“安倍晋三との一騎打ち”とは
それでいうと石破氏はわかりやすい。一例をあげると2018年の総裁選で安倍晋三氏と一騎打ちとなったとき、石破氏は「正直で公正、謙虚で丁寧な政治をつくる」と主張。森友・加計問題を念頭に安倍晋三首相を批判したと報道された。
すると党内から「個人攻撃だ」と言われ、石破氏はそのフレーズを言わなくなったのだ。「正直・公正」と言うと叱られる自民党の状況がやたら面白かったのだが、一方で石破氏の優柔不断さを痛感した。だから今回も予想できた。
しかしここまで総裁選と言っている内容が違うと、あらためて「総裁選とは何か」について考えねばならない。アレはやはり自民党のPRイベントであり“興行”だろう。候補者は聞こえの良いことだけをひたすら言えばよく、自民党が変わるかのような雰囲気をせっせと作り出す。
罪深きはそれらの空論を垂れ流したメディアの共犯ぶりではないか。テレビ局の多くは特定政党に電波ジャックをさせ、一方的な言葉のばらまきを許したことにならないか。総裁選直後の世論調査で「自民党の支持回復」と報じるメディアもあったが、PRを流し続けたらそりゃそうなるだろう。
総裁選の主張は「営業トーク」だったのだ
総裁選での論戦がいかに適当だったか証拠を出そう。石破陣営は日米地位協定の見直しについて「総裁選ではライバルとの違いを際立たせるため、主張を先鋭化させた」と語っている(読売新聞10月2日)。つまり営業トークだったのだ。
石破氏自身も野党各会派へのあいさつ回りをした際に「石破カラーを出して頑張ってください」と声をかけられると、「出したらぶったたかれるでしょ」「出すと国民は喜ぶ、党内は怒る」とあっさり語っていた。自分が総裁になっても自民党は変わらないと告白したのと同じだ。メディアは次回の総裁選報道をきちんと考えたほうがいい。いかにその場でちゃんと問えるか、ツッコめるかを。
石破氏は過去の自分が殺しに来ていると気づいたほうがいい。さらに気づくべき点もある。