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「もう昔のことだから、何歳だったかははっきり覚えていないけど、小さい子供が食いもんがなくて亡くなってんだぁ。母ちゃんが刑務所に入って、面倒が見切れなく、可哀想なことになっちまったんだぁ」

その後の加害者家族の人生は…

 人肉を食べるという事件は、飽食の現代から見ると、ショッキング極まりないが、当時の時代状況を冷静に考えてみると、どこの場所で起きてもおかしくはなかったのかもしれない。その証しとして、村人たちの誰もが朝吉や龍を責めない態度に現れているように思えた。

 朝吉一家は事件後も村に留まり、つい数年前に朝吉と龍の間にできた息子が亡くなるまで、暮らし続けていた。刑務所から出た龍は下仁田市内の寺に引取られ、そこで生活したという。

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朝吉一家が眠る墓(撮影:八木澤高明)

 朝吉一家が暮らした家があったところから目と鼻の先に、朝吉が眠る墓があるというので、訪ねてみることにした。つい最近作られたと思われる真新しい墓には、朝吉の名前が刻まれていた。ただ墓誌には人身御供となったトラの名前は刻まれていなかった。私は、トラの冥福を祈りつつ手を合わせたのだった。