物理的な耳栓を上回る効果は期待できる
ところでこうしたANC対応のイヤホンは、作業時の耳栓として使われることもよくあります。音楽などを流すのではなく、勉強や作業に集中するために、ANC機能を利用して静寂な空間を作り出すというわけです。
こうした用途にこれら3製品が使えるかと問われれば、シャオミ製品とDonner製品については、AirPods Proには及ばないものの、物理的な耳栓を上回る効果は期待できます。あとはイヤーピースをどれだけフィットさせられるかでしょう。グリーンハウス製品については、耳栓としての用途は厳しい印象です。
外音取り込みモードはどうでしょうか。AirPods Proの場合、補聴器のように外から入ってきた音を増幅するため、未装着時よりも外部の音が聞こえやすくなり、離れた距離のヒソヒソ声まで聞こえてしまうこともありますが、今回の3製品はそのような効果はなく、モードを切り替えてもあまり違いを感じないこともしばしばです。
ただその一方で、AirPods Proの外音取り込みモードは、不自然に増幅されることで長時間聞いていると耳が疲れやすいという欠点があるのに対して、今回の3製品はそのようなことはありません。補聴器のような用途こそ期待できないものの、電車の中でアナウンスを聞くといった一般的な用途ならば、どれも問題なく利用できます。
AirPods Proとは差があっても、コスパは抜群
以上のように、AirPods Proなど上位の製品とはさすがに差があるものの、シャオミ製品とDonner製品は、実用レベルの性能は備えています。敢えて区別するならば、防水非対応でオプションも少ないぶん安価なシャオミ製品と、防水対応でオプションも豊富なDonner製品といったところでしょうか。唯一グリーンハウス製品だけは、価格こそ健闘しているものの、ANC搭載イヤホンとしては分が悪い印象です。
もっとも一般的なワイヤレスイヤホンとして見た場合は、3製品ともにかなりの高水準です。先日この連載で紹介した実売2000円以下の格安ワイヤレスイヤホンは、音がこもっていたり、耳障りな高音がシャカシャカ鳴るなど、基本性能の部分で何らかの問題を抱えていたり、サイズ違いのイヤーピースが付属しないなど露骨なコストダウンの跡も見られましたが、今回の3製品はそうした問題はありません。
また格安ワイヤレスイヤホンでは、リモコンに音量調整機能がないなど、一部の機能はスマホ本体から操作しなくてはいけない場合もありますが、今回の3製品はそうした機能の漏れも見られません。さらに格安ワイヤレスイヤホンにありがちな、混信によって通信がブチブチと切れる現象も、今回テストした限りでは発生しませんでした。
もともとノイズキャンセリングは、3万円クラスのハイエンドモデルでもあらゆる音を完全にシャットアウトできるわけではありません。多少の音は許容しつつも、価格と性能のバランスで選ぶならば、今回紹介した3製品は、いずれも有力な候補に入ってくる存在と言えそうです。