そんなわけで、日々何かと忙しい。
加えて、いまの僕には絶対に外せない「通院」というスケジュールがある。
いまは3週間に1度の化学療法、それとは別に不定期で整形外科と放射線治療科の受診があるので、平均すると月2回程度のペースで東海大学医学部付属病院に通っている。
これも月によって差があり、放射線の照射となると、連続5日とか2週間とかで通院する必要が出て来る。新宿の自宅から神奈川県伊勢原市の病院まで1時間半、往復だけで3時間かかるので、病院滞在時間を入れると一日仕事になってしまう。
3週間に一度投与する「カバジタキセル」は、好中球という白血球の仲間を抑制する副作用があり、放置すると感染症にかかりやすくなってしまう。そこで投与後1~2日後にペグフィルグラスチム(商品名「ジーラスタ」)という注射をうつ必要があるのだ。
最初はこの注射だけのために東海大学病院に行っていたが、たった1本の注射をうつために往復3時間の通院はあまりにも非効率なので、小路医師にお願いして、ジーラスタの投与のみ、自宅近くの内科医院で受けられるようにしてもらった。
そんなわけで、日々何かと忙しい。
自営業者にとって忙しいことは嬉しいことなのだが、この数週間、強いだるさを理由に「午前の部」か「夜の部」のいずれかを休まざるを得ないことがあり、ひどい時には「臨時休業」として終日を寝て過ごす日もあるのだ。
しかし、寝て過ごしたからといってラクになるわけでもない。だるさ対策として処方されている漢方薬「補中益気湯」は毎朝飲んでいるが、いまのところ大きな効果を実感するには至っていない。
とはいえ、前回までのPSAの下がり方を見てしまうと、ここでカバジタキセルを中断する勇気もない。これから秋に向けて仕事が忙しくなるだけに、“だるさ”の存在は不安だが、残された仕事を完遂するには、まず生存期間を延ばさなければならない。そもそも僕は、仕事をしないと収入が途絶えるので、医療も受けられなくなってしまうのだ。
※本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(僕の前立腺がんレポート第14回「がん細胞を“敵”として駆逐するか、“共存”を目指すべきか?」、初出:
長田昭二氏の本記事全文は、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
■連載「僕の前立腺がんレポート」
第1回「医療ジャーナリストのがん闘病記」
第2回「がん転移を告知されて一番大変なのは『誰に伝え、誰に隠すか』だった」
第3回「抗がん剤を『休薬』したら筆者の身体に何が起きたか?」
第4回「“がん抑制遺伝子”が欠損したレアケースと判明…『転院』『治験』を受け入れるべきなのか」
第5回「抗がん剤は『演奏会が終るまで待ってほしい』 全身の骨に多発転移しても担当医に懇願した理由」
第6回「ホルモン治療の副作用で変化した「腋毛・乳房・陰部」のリアル」
第7回「恐い。吐き気は嫌だ……いよいよ始まった抗がん剤の『想定外の驚き』」
第8回「痛くも熱くもない〈放射線治療〉のリアル 照射台には僕の体の形に合わせて…」
第9回「手術、抗がん剤、放射線治療で年間医療費114万2725円! その結果、腫瘍マーカーは好転した」
第10回「『薬が効かなくなってきたようです』その結果は香港帰りの僕を想像以上に落胆させた」
第11回「『ひげが抜け、あとから眉毛とまつ毛が…』抗がん剤で失っていく“顔の毛”をどう補うか」
第12回「『僕にとって最後の薬』抗がん剤カバジタキセルが品不足! 製造元を直撃すると……」
第13回「『体が鉛のように重くなる』がん患者の“だるさ”は、なぜ他人に伝わらないか?」
第14回「がん細胞を“敵”として駆逐するか、“共存”を目指すべきか?〈化学療法、放射線治療、仕事…日常のリアル〉」
第15回「ステージ4の医療ジャーナリストが『在宅緩和ケア』取材で“深く安堵”した理由」
第16回「めまい発作中も『余命半年でやりたいこと』をリストアップしたら楽しくなった マネープラン、自分の入るお墓参り、思い出の街探訪…」
がん細胞を“敵”として駆逐するか、“共存”を目指すべきか?〈化学療法、放射線治療、仕事…日常のリアル〉
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