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主人公をなぜジャーナリストに?

―主人公を内戦に参加する兵士ではなく、それを取材するジャーナリストにしたのは?

 今、ジャーナリストは敵視されがちだと思います。トランプのような腐敗した政治家がジャーナリストたちを矮小化したからです。それはアメリカだけでなく世界中で起こっています。だからジャーナリストたちがデモを取材するとデモの参加者から罵られたり、唾をかけられたり、ひどい時は肉体的な暴力を受ける。これは本当に狂気の沙汰だと僕は思います。ジャーナリストは我らの自由を守るために必要なんです。事実を包み隠さず公平に報道するジャーナリズムが。

 

昔ながらのジャーナリズム

―『シビル・ウォー』で最も若い戦場カメラマンのジェシーはフィルムを使っています。デジタル・カメラではなく。

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 昔ながらのジャーナリズムを思い出してほしかったからです。それは中立の報道です。一部の報道機関はプロパガンダ機関のようなものですよね? FOXニュースは右翼のプロパガンダ、CNNは左翼のプロパガンダで。それは視聴率と広告収入を集めるためです。でも、昔のジャーナリズムはもっと中立でした。

―監督のお父さんは新聞の風刺漫画家でしたよね。

 はい。だから私は幼い頃からジャーナリストたちに囲まれて育ちました。

―するとジェシーはあなたの投影なんですね?

 そうですね。私は20歳のとき、海外特派員になりたかったのです。でも、年配の海外特派員にとめられました。

あえての、すっきりしない物語

―でも、主人公のジャーナリストたちも感情移入しにくいですね。目の前で虐殺行為があっても、とめるわけでもなく、ただ撮影し続ける。中立ということでしょうが、観客はすっきりしない。

 すっきりしないから観客は議論し、物語を検証するんです。今の映画は、観客と対峙することに臆病になってるんですよ。映画は作るのに多額の費用がかかるため、人々は決定において保守的になります。お客さんに映画館に来てもらわなきゃならないから観客を不快にしたくないんです。だからリスクを取ることを恐れる。でも、『シビル・ウォー』はそれに反抗してるんです。観客に対して攻撃的であろうとしたんです。

 ホラーやスリラーも観客を怖がらせているようで、実際にはそうでもない。トム・クルーズが危険にさらされても安心でしょ? なぜなら彼はヒーローだから、最終的には勝つとわかっているからです。でも、『シビル・ウォー』はそうしたくなかったんです。観客にとっても安全地帯はありません。