新聞を読んでいたら興味深いことに気づいた。石破茂首相(自民党総裁)が衆院選で自民党議員の一部を非公認とする方針を決めたことについてだ。
次の見出しの違いがわかるだろうか。
『「不記載」6人非公認へ 最大37人 比例重複認めず 衆院選 自民』(読売新聞)
『裏金43人比例重複認めず 萩生田氏ら6人非公認 首相、自民内押し切る』(毎日新聞)
読売と産経は「不記載」議員と書き、毎日・東京・朝日は「裏金」議員と書いていた(10月7日一面)。自民党派閥の政治資金規正法違反事件のことである。
不記載か、裏金か?
不記載だと事務的なうっかりミスというニュアンスがある。多くの自民議員はこれを主張しているのだろう。ところが派閥によっては伝統的な匂いもする。
「裏金」問題は単なる記載ミスではない
先月末に東京地裁で安倍派事務局長が虚偽記載の罪で有罪判決を受けた。判決では「虚偽記載の前提となるノルマ超過分の処理については、会長や幹部の判断に従わざるを得なかった」と述べられた。事務局長は公判で虚偽記載の中止を派閥幹部に進言していたことを明らかにしていた。
単なる記載ミスではなく「裏金」を貯める慣習が政治家の中にあったことを事務局長もほのめかしていたのだ(「幹部」が誰かは明らかにせず)。
公判での事務局長の姿勢について、自民党関係者は「他人に責任を押しつけるつもりはないが、自分だけですべて決めたわけじゃないことを分かってほしいという、事務局長なりのギリギリのバランスだったんだろう」(朝日新聞10月1日)と分析している。
こうした流れを振り返るとやはり「裏金」事件であり、調査はまだまだ必要ではないか? すると注目すべき発言があった。石破首相が9日の党首討論で「裏金は決めつけ。不記載だ」と断言したからである。立場が変われば発言も変わるものだ。
ほんの1年前まで石破氏は終わった人だと思われていたが、裏金事件で言動が再注目されて遂に総裁にまで昇りつめた。いわば“裏金で売れた人”なのにトップに立ったら「裏金は決めつけ。不記載だ」というのである。石破氏は過去の自分に負けている(かつての自派閥にも「不記載」問題があったことが浮上している)。
さてそんな石破首相のもう一つの決断が報じられた。