1ページ目から読む
3/4ページ目

観客の安心感を奪うような音響

―音響も攻撃的ですね。銃撃では本当に撃たれているように恐ろしいです。

 カッコいい音にしないで、耳を塞ぎたくなるような攻撃的で暴力的な不快な騒音で、観客の安心感を奪おうとしました。

―音楽、曲の選択も居心地悪いですね。とても残虐なシーンに陽気でポップな曲が挿入され、観客を感情的に混乱させます。

ADVERTISEMENT

 観客に対して攻撃的というのは、選曲やメッセージをわかりやすくしないことも含まれるんですよ。

根底にあるレイシズム

―最も恐ろしかったのは、虐殺している兵士(ジェシー・プレモンス)に主人公たちが

「撃つな! 我々はアメリカ人だ」と言うと「で、どっちのアメリカ人なんだ?」と聞かれるシーンですね。どう答えれば殺されないですむのかわからない。

 あのシーンは普通の質問に聞こえますが、考えてみると実にバカバカしく、差別的な質問です。その根底にはレイシズムがある。普段は話さないようにしている差別があの質問に表出しているんです。

既存のものが崩壊することを夢見ているよう

―あなたの映画は、危険な地帯に赴く勇気ある主人公たちが常に女性ですね。『エクス・マキナ』(14年)、『アナイアレイション 全滅領域』(18年)や『MEN 同じ顔の男たち』(22年)、みんなそうですね。

 それは政治的な理由よりも、自分の年齢のせいでしょうね。私は1970年生まれで、私が育った頃は、映画の99%が男性が主役でした。だから、男性が主役の物語を退屈に感じるんでしょう。

―あなたは『28日後…』から一貫して、既存の秩序やシステムが崩壊することを夢見ているように見えます。

 ええ、まったくそのとおりです。正直いって(笑)。

映画を通じて世界に訴えたいメッセージ

―では、今年のアメリカ大統領選挙についてどう思いますか?

 とても大きな危険を感じます。今、世界には二つの未来があります。ひとつはトランプが勝つ未来、もう一つはカマラ・ハリスが勝つ未来です。私はトランプが勝つ未来を望んでいません。

―イギリスについてはどうでしょう。

 保守党は腐敗し、自分をコントロールできなくなって崩壊し、労働党、中道左派の政権になりました。私はほっとしています。近年イギリスの政治はアメリカを追ってきましたが、これからは別の道を行くのではと思っています。

―最後に、この映画を通じて世界に訴えたいメッセージを。

 トランプを大統領にするな! ですね(笑)。