―アメリカの内戦という発想はどこから?
私の空想ではなく、現在起こっている事態をそのまま反映しているつもりです。この映画の50%は今、既に起こっていることです。
―あなた自身はイギリス人ですよね?
イギリス人の私がこんな映画を作るのは命知らずだと気づいたのは、公開される約24時間前で遅すぎました(笑)。
アメリカだけでなく、地球全体で起こっていること。
―今日のアメリカの政治についてどう思いますか?
ポピュリズム、過激化、分断、腐敗。ただ、それはヨーロッパ全体、いや、地球全体で起こっています。アメリカはトランプのせいで目立っているだけです。イギリスにはボリス・ジョンソンというミニ・トランプがいたし。
―英国のEU離脱をやった連中ですね。
彼らは国に大変な損害を与えましたが、まったく責任を取ろうとしません。
左右どちらの側にもつかないように見えるが…
――でも、この映画を観ると、左右どちらの側にもつかないように見えますが。
ついてますよ。これは左右ではなく、中道か過激派かの戦いで、私は中道です。
―『シビル・ウォー』では大統領政府に反乱を起こすのはカリフォルニア州とテキサス州の同盟軍ですが、かなりねじくれてますね。なぜ、最もリベラルで民主党寄りのカリフォルニアと最も保守的で共和党寄りのテキサスが?
大統領がファシストだからです。憲法を無視して任期を延長し、国民を攻撃したから、テキサスとカリフォルニアがイデオロギーの左右を超えて同意して抵抗を始めたんです。理にかなったことだと思いますよ。
混沌とした状態を示したかった。
―しかし、この映画では誰と誰が戦っているのか判別できません。それが観客を常に不安にします。
右か左か、黒か白か、善か悪かで考えるのは非常にアメリカ的ですね。最初のシビル・ウォー(内戦)だった南北戦争は、奴隷制を維持しようとする南部と、それをやめさせようとする北部という倫理的に善悪がわかりやすい戦いでした。少なくとも現在の視点では。しかし、現在起こっている問題は、そう単純ではありません。善悪では割り切れない複雑で答えのない大規模な分裂なのです。その混沌とした状態を示したかった。それに、戦争映画として痛快なものにもしたくなかったんです。