2023年に『ノウイットオール あなただけが知っている』で第30回松本清張賞を受賞、今年受賞後第1作となる『なんで死体がスタジオに!?』を刊行した作家・森バジル。

 彼の作品の魅力にいち早く気づき、推し続けている書店員さんがいる。紀伊國屋書店新宿本店で、エンタメ単行本のエリア担当をしている反中啓子さんだ。

 『ノウイットオール』『なんで死体がスタジオに!?』を累計550冊以上売っている反中さんに、作家・森バジルの魅力と、本を売るためのノウハウを聞いた。

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――紀伊國屋書店新宿本店さんでは、反中さんの手書きポップとともに、文芸単行本ではまだ1作しか著作がなかった新人作家・森バジルさんの『ノウイットオール』を、長く置いていらっしゃいました(注:森バジルさんは『1/2-デュアル-』でライトノベル作家としてデビュー経験あり)。『ノウイットオール』を読むきっかけは何だったのですか?

 

反中 毎月、版元さんと会議を行って、新刊のプレゼンを受けるのですが、担当の方から松本清張賞の受賞作ということで紹介されたのがきっかけでした。プルーフをいただいて読んでみると、めちゃくちゃ面白くて!

『ノウイットオール あなただけが知っている』森バジル(文藝春秋)

 切縞市という架空の町を舞台に、推理、青春、科学、幻想、恋愛と5つのジャンルをまたいで物語が進行します。ジャンルが変わるたびに、同じ町の見え方もガラッと変わるのですが、それが全く不自然ではないというか、地続きに起きていることなんだというのが伝わってくるんです。

 ジャンルを問われると難しい小説です。だからこそ、「森バジル」という作家を知ってもらって、読んでもらえるようなポップや展開を作れたらと思っています。みんなでこの作品を読んで、良さを語ろうぜ!という気持ちです(笑)。

 

 森さんは、「着地が完璧な作家」だと思っていて。『ノウイットオール』も、少しずつ話が進んで、登場人物がつながっていって、種明かしがどんどん進んでいくんですが、それが最後に「バン!」ってまとまるんです。

 全員の言動と展開が最後にギュッとまとまって、風呂敷がきれいにたたまれるというか……伏線回収というと大げさかもしれない、伏線というには小さいような仕掛けがたくさんあって、それを最後に全部納得して読み終えられるんです。読後感がすごくいい。