対談集『新世代ミステリ作家探訪』『新世代ミステリ作家探訪 旋風編』(光文社)などの著書を持ち、若手ミステリ作家に造詣の深い書評家・若林踏氏が、森バジル氏の『なんで死体がスタジオに!?』を読みます。

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 ミステリに真正面から挑んでみましたが、どうですか?

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 作者が胸を張って挑戦状を叩きつける姿が目に浮かぶ。よし。その心意気、受けて立とうじゃないか。

『なんで死体がスタジオに!?』森バジル(文藝春秋)

 『なんで死体がスタジオに!?』は森バジルの再デビュー2作目に当たる作品である。再デビュー、と書いたのは、森には2度の小説新人賞受賞歴があるためだ。1度目は2018年の第23回スニーカー大賞《秋》優秀賞受賞で、受賞後に『1/2―デュアル―死にすら値しない紅』という文庫作品を刊行している。2度目は第30回松本清張賞を「ノウイットオール」で受賞したことで、同作は『ノウイットオール あなただけが知っている』と改題のうえ2023年に刊行された。『ノウイットオール』は全5章から成る物語で、推理小説、青春小説、科学小説など、それぞれ異なるジャンルの独立した作品として楽しめる構成になっている。「どんなジャンルでも書いてみせますよ」という作者の挑戦的な姿勢が垣間見えた小説だった。

『ノウイットオール あなただけが知っている』森バジル(文藝春秋)

 そこで再デビュー2作目の『なんで死体がスタジオに!?』である。「どんなジャンルでも」の一発目として森が選んだのは、ミステリであった。その結果はどうだったか。