電車の先頭に表示される「行先表示幕」を再現したアプリが、鉄道ファンの心にジワジワくる。趣味的におもしろく、再現度が高いので資料価値もある。そして、沿線の人々にとっては懐かしい。思い出を呼び起こすツールにもなっているようだ。

 タイトルは「くるくる回そう!方向幕コレクション for Nintendo Switch(TM) -近畿日本鉄道編 part1 近鉄奈良線- 鉄道方向幕シミュレーター」だ。長い。しかもpart1とあるからには今後part2も出るはずで、近畿日本鉄道編と言うからには、今後は他の鉄道会社版も出す予定だという。公式Xによると第2弾は「西武新宿線」だ。11月7日に発売予定とのこと。

実物の方向幕をNintendo Switchで再現するアプリ (筆者撮影)

 このアプリはゲームではない。電車の先頭車のデザインに、電車の行先と運行種別を表示するだけ。行先表示幕は「急行 ○○」や「各停 △△」など、電車に乗ったことがあるなら誰もが見ている表示器だ。これを見て、自分が乗るべき電車を確認するわけだ。電車にとってはアイデンティティである。

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鉄道廃品の中でもっとも人気があるグッズの1つ「方向幕」

 この行先表示は終点に着くとスライドして次の行先に変わるけれど、実は長いフィルム状になっていてモーターで巻き取っている。そしてお気づきかと思うけれども、この方向幕の時代が終りつつある。いまやほとんどの電車で、行先表示はLEDによる電光掲示になっているからだ。

 新しい電車は始めからLEDだし、古い電車もリフォーム時にLED式に交換されてしまう。その結果として方向幕の役目は終り、廃棄される。状態の良いものは鉄道廃品市などで販売されることもあり、好事家がこぞって買っていく。具体的な役割があり、身近な駅名が出てくるから、鉄道廃品の中ではもっとも人気のある商品の1つだ。これを徹底的にリアルに再現したアプリが「くるくる回そう!方向幕コレクション」だ。

 開発元は「カエルパンダ」という東京のゲームメーカー。ニンテンドーゲーム機向けのミニゲームや、3DダンジョンRPG『残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu-』の開発元でもある。社長の奥田覚氏は近鉄ファンで、重度の鉄オタともお見受けしたけれども、鉄道をビジネスにしてこなかったようだ。