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 奥田氏と私は、共通の友人の樋口浩路氏(パパイヤ電池開発)を介して知り合った。樋口氏はJR北海道の「流氷物語号×オホーツクに消ゆ」コラボで尽力してくれたスタッフだ。今年の3月、流氷物語号の運行が終ってすぐに樋口氏から「鉄道のアプリを作っている友人がいて、鉄道ライターの意見を聞きたいって」と連絡があった。

 話を聞けば「Nintendo Switchで方向幕を作りたい。値段は1000円くらいで」という。正直「バカだなあ」と笑ってしまった。もちろん良い意味で。この笑いは軽蔑ではなく敬意だ。我が意を得たり、よくぞ考えてくださいました。きっとこのバカなノリをわかってくれる鉄道ファンはたくさんいるはず。なにより私がほしくなった。「やってください。すぐにやってください。どこかにマネされる前に!」とお願いした。

方向幕の実物とサンプル版アプリ (筆者撮影)

 それから2カ月後、奥田氏から「近鉄さんが本物の方向幕を貸してくれました。見に来ませんか」とお誘いをいただいた。奥田氏によると、近鉄にライセンスしてほしいと電話したら、法人であれば対応できると言われ、企画書を送りサンプルを持参したところ、同席した数人の社員全員が面白がってくれたという。

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つなげると通勤電車1両とほぼ同じ長さの20m!

 方向幕の確認会の場所は都内の小さなスタジオだった。グラフィックデザイナーで鉄道のフォントに詳しい石川祐基氏も同席し、カレンダーの筒のような方向幕を次々に広げた。長い。

 1つの行先のサイズはヨコ約64cm、タテ約24cm。それが82枚ぶんつながっていて、1ロールは余白を含めて約20mもある。通勤電車1両の長さとほぼ同じだ。こんなものが搭載されていたのか。全部広げられないので、両端を持って、少しずつスクロールして眺めた。

広げてみたら予想以上に長かった!! (筆者撮影)

 慎重にロールを広げ、行先や種別を眺める。大阪難波、京都、奈良、行ったことがある駅名を見つけると嬉しい。大和西大寺で盛り上がる。この駅は奈良線と京都線と橿原線が平面交差する駅で、線路が複雑に行き交い、線路好きにはたまらない場所だ。瓢箪山、生駒、新田辺、このあたりは沿線の人々にとって身近な駅名だ。

 そして石川氏が、「これ、PCにはないフォントですね。写植だと思います」という。さすが「もじ鉄」を広めた石川氏の気付きだ。