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 リアルだという声が多いけれど、実物を再現しているから当然だ。実物だからこそ、ふだん表示されない種別や行先の組み合わせもある。それを見つけて喜ぶ人がいて、事故などによる突発的な折返し運転に対応するためだろうと予測する人がいる。ただ実物どおりに作っただけなのに、宝探しのような発見と考察の面白さがある。

 なかには「ああ、もう1つ先の駅に行ってくれたら帰れたんだよなあ」と、終電車の恨めしい思い出を語る人も。通勤だけではなく、通学で友達と乗ったり、デートで乗ったりした路線だとか、方向幕から連想する思い出がある。

「これを遊びたくてNintendo Switchを買った」という声もいくつかあった。ゲームに興味のない人がハードを買う現象もおもしろい。これを機会に、ニンテンドーSwitchの鉄道ゲームを楽しんでくれるかもしれない。

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阪神電鉄直通用、奈良線、京都市交通局直通用、東大阪線(現・けいはんな線)の6本を収録

方向幕の作動音、ドアの開閉音も本物の電車で収録した本気度

 方向幕の作動音も本物の電車で録音した。近鉄の協力で、大和西大寺の車庫に招かれて録音させてもらったという。方向幕だけではなくドア開閉音なども収録しており、これも鉄道ファンを唸らせている。なんだか、電車そのものを手に入れたような喜びようだ。

「近鉄さんは、弊社のような零細企業にも、本当に親切に対応してくださいました」と奥田氏は言う。鉄道ホビーグッズは鉄道会社が趣味を理解してくれないと商品化できない。そして理解が深いほど、情報を公開してくれて、良い商品ができあがる。第2弾を制作している西武鉄道もとても親切で、ほぼ新品の方向幕を貸してくれた上に、ふだんは公開していない保存車両の作動音も収録させてくれたという。これは期待大だ。

クルマに搭載してみたけれど、タクシーと間違えて近寄る人がいそうだからやめておこう(筆者撮影)
フロントガラスに直接取り付けると法令違反になるので、サンバイザー裏に固定してみた。ツーリングカーレースの電光表示器みたいになった(筆者撮影)

 奥田氏によると、「近鉄は第2弾、第3弾も制作するつもりですが、商品としての2本目は関東の私鉄にします。将来はLED表示器も検討しますけれども、まずは消えゆく方向幕をデジタルでアーカイブしたいと考えています」とのこと。

 公式サイトや公式Xアカウントには、商品化してほしい会社や路線の要望もたくさん寄せられているという。鉄道会社が歓迎してくれるほど、商品化の可能性が高まり、より充実した内容になる。若い人が遊ぶゲーム機向けだけに、鉄道会社のファンを増やすことにもつながるだろう。

 値段も手頃だし、身近な路線の行先を表示して部屋のアクセサリーにしても良いかもしれない。10月22日のアップデートで、スクリーンセーバーのように自動的に行先を変更する機能が追加された。今後のラインアップが楽しみだ。