美しい文化を絶やしていいのか
「社長を受ける前に、東山さんとは何度かお話ししましたが、人間的魅力に溢れていて、本当に責任感の強い方です。どこかの雑誌で東山さんが『90歳までタレントとして活動する』と発言されていたのを読んだことがあった。そこまでエンターテイナーとして覚悟を決めていた彼が、一番大好きな仕事をやめるというんですよ。未経験の経営と、何年もかかる厳しい補償を自分の責任で行うと判断されたことに、感動というか、仰天しましたよね」
もう一つが新会社のもつポテンシャルだった。
「僕の力でジャニーズを再生できたら、こんなすごいことはないなと興奮したんです。ジャニーズには、木村(拓哉)さんになりたい、松本(潤)さんになりたいと思って、若い子が入ってくるわけじゃないですか。そういう『美しい先輩の系譜』がある。いまや世界で人気の韓国エンタメにも影響を与えるような歌と踊りと芝居のコンテンツがある。考えようによっては、こんな巨大なエンタメのグループって日本の宝じゃないかと。このキャンセルカルチャーの中で、美しい文化を絶やしていいのかと考え直したんです」
社長のオファーは井ノ原快彦からだった
社長就任にあたって、ジュリー氏からの要望はあったのだろうか。
「一切ありません。そもそも『社長になってください』と言ってこられたのは、井ノ原(快彦)さんです」
社長のオファーはイノッチからだったというのだ。
「エージェント制の話を僕が解説していると、『じゃあ、福田さんがやってくださいよ!』って言われたんですよ。井ノ原さんは本当にコミュニケーション能力が高い方で、『この流れで役員になっちゃったけど、経営についてはわからない』と正直におっしゃる。逆に、僕は経営のことは分かりますけど、タレント養成については何もわからない。だからそこを教えてくださいねと役割分担しています。最近は、毎日一緒にいますよ」
社長を引き受けることを決めたあとに、真っ先に始めたのはタレント160人との面談だったという。
最初に会ったのは、あのトップスターだった。
「もちろん木村拓哉さんが一番です。僕に直接おっしゃったわけではありませんが、すごく評価してくださったと聞きました。木村さんとの面談が上手くいったおかげで、その後はかなり助けられました。というのも、今の事務所で木村さんは長男的なポジションにいる。その彼に『何だい、こいつ!』と思われたら、信頼を一気に失いますよね。この事務所はそういう序列がきちんと確立されています。現代の石原軍団ですよ」