故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、ジャニーズ事務所が被害者への補償終了後に廃業する方針を示してから1年が経過。新社長となった東山紀之は「人類史上、最も愚かな事件」と述べ、補償に専念するとしてタレント業を引退した。

 日本最大の“アイドル帝国”崩壊のきっかけとなった昨年の英BBCによるドキュメンタリー番組、あらゆる日本メディアが“黙殺”した25年前の「週刊文春」によるスクープ記事とはどのようなものだったのか。経緯を追った当時の記事を全文公開する。

(初出:「週刊文春」2023年3月16日号。年齢、肩書は当時のまま。)

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2023年10月2日、記者会見する東山紀之氏と井ノ原快彦氏。この会見で、社名を「SMILE-UP.」に変更することを発表した ©時事通信社

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「口でされたり…」元ジャニーズジュニア3人による顔出しの告白。2023年3月7日放送のBBCは、日本で封印されてきた闇を明るみに出した。小誌が暴いたジャニー喜多川の性加害を黙殺してきた芸能界、メディア、広告……。実は、小誌報道後も性加害は続いていた――。

 画面いっぱいに映る、黒縁メガネとマスク姿の男性。一瞬せき込むと、俯きながらこう声を絞り出した。

「戻ってきた時には多分、顔は……。(声を詰まらせて)ちょっとごめんなさい。(顔は)おかしかったと思うので。皆には夢が壊れたとか、そんな感じで言って、その後に何人かが、『これを我慢しないと売れないから』と」

 性的虐待の被害者が、テレビカメラの前で衝撃の告白をした瞬間だった。

 イギリス時間の3月7日午後9時、公共放送「BBC Two」のゴールデンタイムで、1時間の番組が放送された。タイトルは、『Predator:The Secret Scandal of J-Pop(プレデター〜Jポップの秘密のスキャンダル)』。

 ここで“プレデター(捕食者)”と名指しされている人物。それは2019年に死去したジャニーズ事務所創業者、ジャニー喜多川氏(享年87)である。番組はジャニー氏を「Jポップ界のゴッドファーザー」と表現。ジャニーズのアイドルがメディアを席巻し、街を歩けば、至るところに、グッズ、広告などあらゆる姿で存在している様子を映し出す。そして、レポーターはこう切り出した。

〈しかし、何十年もの間、ジャニー喜多川にはある疑惑がつきまとっていました。事務所に所属する少年たちに、性的虐待を加えていたという疑惑です〉

ジャニー喜多川氏

元ジュニアの男性3名が顔を出して登場

 番組には被害を受けた元ジャニーズJr.の男性3名が、顔を出して登場する。冒頭の男性は30年以上前にジュニアだったハヤシ氏(仮名)。彼は15歳のときにオーディションに合格した。初めてのレッスンの日、“合宿所”と呼ばれるジャニー氏の自宅マンションに招かれた。そこで他のジュニアと遊んでいると、

「お風呂に入っておいでよ」

 とジャニー氏から声がかかったという。風呂場に行くと、ジャニー氏がバスタブにお湯を張っていた。

「上着を脱がせてくれて、そこまではまだ親切だなと思っていたんですが、ズボンに手がかかって、自分で脱げますと言ったときに、無言だったんですね。それがすごい恐怖心で。そのまんま何もできず、ズボン脱がされ、パンツ脱がされ、靴下脱がされ。ジャニーさんはお風呂に入らない、洋服も着てますけど。僕1人お風呂入れられて全身洗われて、お人形さんみたいに」