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 小誌は今回、改めてジャニーズにBBCの取材や、判決後も性加害が続いていたことについて聞いた。するとBBCの取材内容は知っているにもかかわらず、

「放送前の番組内容に関するものとなりますため、回答は差し控えさせて頂ければと存じます」

日本メディア“沈黙のリスト”

 番組が最後に強調したのが、日本メディアの黙殺だ。アザー氏らは公共・民間放送、新聞に取材をすべく、何十もの連絡先をまとめた。そして1回目の取材申し込みメールをしたか、2回目、3回目をしたか、電話連絡をしたか、返信があったか……チェックするリストも作った。だが――。

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「完全な無視か、丁寧な拒否でした。『ご関心をお寄せ頂き有難うございます。ただ私たちは関与したくはありません』というもの。取材に応じたのはゼロ。最終的にできたのは“沈黙のリスト”でした」(アザー氏)

番組名は「プレデター」

 なぜ、日本メディアが取り上げないのか。インマン氏は「ジャニーズ事務所の圧倒的なパワーが芸能界と、日本文化に沁み込んでいるからだということがわかりました」と言う。

「アーカイブ映像の使用許可を取るのが、こんなに難しかった経験はありません。ジャニーズのアイドルが歌って踊っている映像を使うために権利を持つ会社にお願いしても、ジャニーズのものは貸し出せないという反応ばかりでした」

 性被害問題に詳しい伊藤和子弁護士が、BBCで放送されたことの意義を語る。

「芸能界における性虐待が報道に値する深刻な問題であるということが、日本社会で受け止められる必要があると思います。利害関係があるという理由で、大手テレビは問題を取り上げていません。しかしそのこと自体が被害を隠蔽したり、助長してきたりした責任があるのではないでしょうか」

©時事通信社

 今回、BBCが報道することのインパクトは大きかった。HPで番組の告知を行うと、放送前にも関わらずアザー氏に元ジュニアからSNSで連絡があった。

「『自分もジャニー氏から同じような被害に遭った』と5人ほどからコンタクトがありました。日本のプレスにリリースは送っていないというのに」(アザー氏)

 番組はBBCワールドニュースでの放送も決定した。3月下旬を予定しているという。インマン氏が言う。

「日本では芸能人の話、単なるスキャンダルと受け止められてしまうかもしれません。でも、これは50年以上続いた少年に対する性虐待のシステムの事件です。スキャンダルではなく、事件なのです」

 日本はまだ、沈黙を続けるのか。

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