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小西 なるほど。エンジェル投資家でもある泰蔵さんのところには、起業を志す若い人たちからの案件も数多く持ち込まれると思いますが、投資に対する判断基準はどこにあるんですか?

 面白く転びそうかどうか、ですね。

小西 最初からコケる前提!? 事業計画は見ないんですか?

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 なにか本質的に新しいことにチャレンジする事業は、最初99%コケますよ。そのときに思いっきり面白くコケてくれそうな方を選んでいるし、億単位の投資の判断をするときも事業計画はまったく見ないです。

小西 えええ! 事業計画見ないの?

©AFLO

 はい。見ません(笑)。「面白く転べ」というのは、試行錯誤のダイナミックレンジをできるだけ大きくとれということ。事業計画は予測の範囲だけど、成功の鉱脈は最初から狭い範囲で探さずに、振り幅を大きくとったほうが見つかる確率が高いですからね。

 事業計画が活きるのは、事業のスキームがある程度確立して、単純にそれを再生産して数のスケールを大きくする段階です。たとえば飲食店なら成功するモデルをつくれたから、出店で規模を拡大しようとか、数を増やすことだけに専念したほうがいい時期。でも試行錯誤フェーズのときに計画を立てると、それに足を引っ張られて逆効果なんです。

 コニタンには分かってもらえると思うのですが、アイデアを試行錯誤しているときに、あれもしかしたらヒントになるかも、みたいなチカチカ!とシグナルのようなサインを感じるときってありますよね。

小西 すごくわかります。まだ何もカタチになってないんだけど、このあたりが鉱脈かもしれないと直感するような感覚というか。

 そのとき下手に計画があると、そのアイデアのチカチカを見落として、もっと良くなる大きな可能性を削いでしまうんですよね。計画から外れていること、予算と実績がどんどん離れていくことに焦ってしまって。

 旅だって、綿密にスケジュールなんか立てずに街をぶらぶらして、あっ、ここ面白そうというところに行ったほうがすごく面白い人に出会えたりしますからね。

小西 本当にそうで、僕が親しくさせて頂いている音楽評論家の吉見佑子さんなんて、一緒に街を歩いていると、パン屋でもないのにクロワッサンを売っている民家を見つけてふらっと入っていくんですね。「なんでこんなところでクロワッサン売っているの?」といつの間にか話が意気投合している。それが後に建築の世界で有名になる上林剛典さんだった(笑)。そうやって偶発的なチカチカに引っ張られていったほうが、絶対面白いものに出会えますよね。

 そうなんです。それってビジネスでも、「成功をゴール」にせずに、「自分の成長」をゴールにおいているからこそできる方法だと思う。

小西 それは微妙な言葉の違いですが、決定的に異なります。自分の成長をゴールに変えるとプロセスがまるで変わってきますよね。アイデアを生む真髄だと思います。