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アマゾンのAWSの先駆けとなったビジネス

小西 それって完全にもうアマゾンのAWS(Amazon Web Services)の概念じゃないですか。

 まさにその先駆けです。プレゼン相手の日本支社長もコンセプトに賛同してくれたので、「ぜひやってください。そしたら僕、真っ先に手ぶらで来ます」と伝えたら、「いや、これは本国の決済なので僕では無理です」という。でもどうしても諦めきれなくて、後日もう一度その方に「一緒に本社に行って説得しませんか」と口説いたんです。

 で、アメリカ本社に行って、「後発のあなた方が日本でシェアをとりたかったら絶対に手ぶらでこれるキャンプ場にする必要がある」と机をたたいてプレゼンしたら、「イエスというのに条件がある。君が日本の支社長をやることだ」と言われて急展開。そこで僕は、キャンプ場の運営をしたいわけじゃないので支社長は引き受けられないが、営業担当として顧客はガンガン連れてくると約束したんです。「僕が10億分引っ張ってくるから」と大見得を切って、壁を突破した(笑)。

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 そうして、僕はお金をかけずにその会社のサーバーを使って新しいサービスをローンチでき、サーバー事業で大成功したその会社はアマゾンに買収されるというオチまでつきました。

小西 すごいなあ! AWSの原型は、泰蔵さんが作ったのかもしれないんだ…。

小西利行氏

 いえいえ(笑)。

小西 それにしても泰蔵さんって、例え話とかうまいしストーリーテラーとして抜群ですけど、昔から仕事の話をするときに「答え」を求めないですよね。誰が相手でも「何がしたいんだ?」と問う。例えば「こういう美味しいお酒をつくりたいです」という起業家がいたら、「そもそも美味しいお酒をつくって何がやりたいの?」って問いかけていきますよね。「そもそも」を繰り返して、最終的に「お酒という形をつかって、世界のやり方を変えていく」ところまでマインドを引っ張り上げて、だったらこうすべきと提示する。

 この「そもそも思考」は私自身も本質をあぶり出すのによく使っている思考法ですが、これは「安易に答えを出そうとするな、むしろ問え」という精神ですよね。

思いっきりやらないと面白い失敗はできない

 そのマインドは、僕が山のように失敗してきて、なぜうまくいかないんだろうと自問する中で、「こんなに失敗して、俺は何をしたいんだっけ? そもそも何をしたかったんだ?」と切実に問い続けてきたからこそ生まれたのだと思います。失敗の数とバリエーションだけは、たぶん起業家の誰にも負けない自負があるから(笑)。

 常に心がけているのは、「やるときに失敗しないように」ではなく「こんな風に面白く失敗しちゃったんですよ、とネタになるようなコケ方をする」ということ。逆に、ネタにもならん失敗はしてはいけない、と。

小西 泰蔵さんに向けて事業のプレゼンをしていた人が「面白い失敗をしろ」って泰蔵さんに言われて、チンプンカンプンになっているシーンを何度も見てきました。「その話、全然面白くないわ」ってプレッシャーを与えて、相手がハッとする瞬間を待っている。

 よく若い起業家にもまわりにも、「面白くない失敗をしたら、許さん」って伝えています。思いっきりやらないと面白い失敗はできないし、「Start Fast, Fail Fast」の精神で「早く始めて、早く失敗する」スピード感が大事なんです。

 あと実は、初期段階でチャレンジせずに“失敗するチャンスを失う”ことのほうが怖くて、事業規模が大きくなってから気付いていない潜在的なリスクが大きく跳ね返ってくるほうが危険なんですね。