子ども・ベビー用品を扱う西松屋が成長を続けている。少子化なのになぜ儲かるのか。流通アナリストの中井彰人さんは「西松屋は驚くほど『売らなくていい』店の作り方をしている。これこそが西松屋が見出した縮小市場で生き残り、成長していくための必勝法なのだ」という――。

写真=アフロ 2020年4月15日、埼玉県越谷市にある西松屋 - 写真=アフロ

人口減少のなかでも店舗を増やすチェーンストア

2023年は、最後まで人口が増加していた沖縄県が減少に転じたことで、全都道府県で人口減少となった、という節目であったらしい。我が国の人口は、2009年に既にマイナスに転じていたのだが、地域によってその進行スピードが異なっており、これで全国共通の事象となった。地方ではかなり早くから減少していた地域があり、減少県の数でみると、1981年だと0県だったのが、1991年15県、2001年27県、2011年39県というペースで増えてきた。

こうした環境下でも、チェーンストアは店舗を増やして成長するという競争を続け、来店客数を増やし、客単価を上げることで、売上を増やすことを目標として、各社がしのぎを削ってきた。しかし、なかには「売れなくてもつぶれない店」というビジネスモデルを作り出している企業もある。長きにわたって縮小し続けているベビー・こども用品市場で、成長を続けている西松屋チェーンである。西松屋の店はいつもガラガラなのに儲かるというのだが、どういうことか。

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売上を追いかけるより、オペレーションを守ることを優先

西松屋は、200~300坪ほどの店を1100店舗ほど全国展開しており、その多くが繁華街ではなく、住宅地に近い郊外ロードサイドにある。入ったことがある人はご存知だと思うが、来店客はまばらで、これで採算があうのだろうか、というほどすいている。

その上、来店客が増えて売上が増えると、近隣にもう1店舗出店してお客を分散させるのだという。なぜ、そうするかと言えば、混んでいると小さい子供を連れたお母さんにとって買い回りがしにくい、ということが第一なのだが、売れすぎると接客、補充などの作業負担が増えて、店舗オペレーションが乱れたり、必要人員が増えたりして、効率性に支障が出るということもあるらしい。売上を追いかけるより、オペレーションを守ることを優先する。これぞ、チェーンストア理論の権化というべき考え方であろう。