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ベビー用品市場は右肩下がり市場の先行事例

1970年代から出生数がマイナスに転じて以降、ベビー・子ども用品のマーケットは基本、縮小の方向で推移してきた。その後、追いかけるように人口減少地域が増え始め、2008年以降は日本全体の人口減少が始まった。ベビー用品市場は、右肩下がり市場の先行事例なのである。「縮小市場」においては時間の経過と共に、プレイヤーが淘汰されていくことは避けられない。ただ、需要がなくなってしまう訳でもないため、生き残りさえすれば、シェアを拡大して成長することもできる。売上が減っても他社より長く存続できる店であれば、残存者利益を手にすることができる、ということだ。

損益分岐点の低い店が、縮小マーケットでも勝ち残るための一つの解であり、西松屋が2024年で30期連続増収を達成した、という事実は、この戦略が正しかったことの証明ともいえる。今後、縮小を前提に戦略を考えねばならない国内小売業にとって、損益分岐店の低い店を実現することこそ、存続のための重要なファクターとなるであろう。

中井 彰人(なかい・あきひと)
流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部を経て、nakaja lab代表取締役。執筆、講演活動を中心に、ベンチャー支援、地方活性化支援なども手掛ける。著書『図解即戦力 小売業界』(技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023ニューウエーヴ賞受賞。