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実質的な負担は低い日本の法人税

 すると大企業を中心とした財界、多くのメディア、官僚にミスリードされた人たちは、こう叫ぶことでしょう。

「日本の法人税は高い。これ以上、負担を増やすと、ますます企業が海外へ流出して、日本国内の空洞化が進んでしまう」

 実際は違います。高いのは法定税率という数字だけであり、実際の税負担は極めて低いのです。しかも企業規模が拡大するにつれて負担率は低下しており、名だたる大企業であっても、「極小」と言っても過言ではない額しか納付していないケースもあるのです。

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©marokeイメージマート

 2014年9月に刊行した『税金を払わない巨大企業』(文春新書)において、私はデータを精査・分析して納税額の少ない企業の実名を挙げ、この驚くべき事実を明らかにしました。こうした企業の税負担を本来あるべき水準に是正すればよいのです。

 ところが安倍政権では、私の提言とは反対に、消費税の増税と企業減税をセットで推し進めようとしています。

 もとよりグローバル経済において、企業は国際競争力の確保が肝要であり、必要以上に重い税負担を課すべきものではありません。「企業いじめ」は企業の活力をそぎ、ひいては国を滅ぼすことも重々承知しています。しかし問題は、日本経済の基盤となり、リーダーとなるべき巨大企業の税負担が、あまりに過小なことなのです。

 日本の稼ぎ頭である大企業に、法律で定められている程度の税の負担を求め、その増収分を財源にして、多くの国民を苦しめている消費税を減税する。くり返しになりますが、これこそ日本経済を活性化させ、社会を明るくし、国民に希望をもたらす一石数鳥となる切り札なのです。

消費税が国を滅ぼす (文春新書 1233)

富岡 幸雄

文藝春秋

2019年9月20日 発売