10月9日午後、衆議院解散に先立って行われた石破茂首相と野党トップによる党首討論には、石破首相の「ストレス」があちこちに現れていた。
筆者が特に気になったのは、立憲民主党の野田佳彦代表との討論だ。野田代表は、“議論”をしようと石破首相に呼びかけて話しはじめた。
党首討論なので、カメラは演台に立つ者に向けられている。つまり、野田代表が話している間、石破首相の表情はほとんど画面に映し出されない。質問をどういう表情で受け止めているかは国民にとっても興味があるはずで、話していない側の表情もワイプなどで見せて欲しいと思ってしまった。
それでも、時折映される表情からは、石破首相のいらだちや不快感が見てとれた。とりわけそれが現れていたのは、質問を受けてから立ち上がるまでの「速度」だ。
序盤は立ち上がり方にも話し方にも余裕があったが…
野田代表はまず「政治資金規正法の見直し」に話を始めた。「企業献金の禁止からスタートすべき」とする野田代表に、石破首相は資料を横に置くと、ひじ掛けに手をつくことなく椅子からスッと立ち上った。そこには何の躊躇もいらだちもない。柔らかく淡々とした声で「お金に左右されない政治を作りたい」と答えた。
だが「政治とカネ」の話が派閥の裏金事件の議員たちに絡むと、そのスピードは変化する。野田代表がいわゆる裏金議員について「相当程度非公認になる」という首相の発言にかみつき、実際は裏金議員のほとんどが公認されることに「大半が公認」ではないかと指摘。さらに裏金議員に政党交付金から血税が支給されることは国民感情から理解できないと発言した。
それを受けて石破首相は、ややスローに立ち上がった。「裏金は決めつけだ」と前かがみで野田代表を睨むように答え、野党議員からヤジが飛ぶとこれを右手を掲げて制した。さらに声音を変えて語気を強め「(裏金ではなく)不記載だ」と言い切った。
立ち上がり方はスローでも、質問は想定内、回答についても自信があったのだろう。