夏日が十月半ばまで続いている。でもね、水曜の深夜だけは、爽快な気分に浸ることができる。

 殺し屋女子二人の超絶アクションに酔いしれ、しばし余韻も楽しむ。『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』、凄いドラマです。

 杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)の繰りだすキレッキレなガールズアクションの格好良さったらないの。

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(写真は10/16放送より)

 殺し屋協会に属する拳銃とナイフのエキスパートだから、反社十人が相手でも返り討ちに。そんな最強の殺し屋なのに、二人はまったり日常を過す。ちさとは人当たりいいが、相手の話なんて聞いてない。まひろに至っては知らない人と会話もできない。二人とも社会に馴染めない。それも脱力系ね。ポワーン。

 脱力系なのに戦闘開始となるや一変、屈強な男の殺し屋を相手に、繰りだす格闘術は速度と殺傷力で敵を上回る。「ちさまひ」の身体の動きの美しさといったら。私は神取忍のギリシャ彫刻のような肉体から繰りだされる技を想起した。

 映画マニアから馬鹿にされるだろうが、私はこのガールズアクション作品、この秋まで知らなかった。三年前に単館系、自主映画とも呼ばれる低予算で公開されるや大好評を博し、昨年に第二弾を製作。この秋には、映画第三弾『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が公開、テレ東で略称『ベビエブ』も始まった。

 映画が先で、その内容と人気に押されてドラマ化。かなり珍しい例だ。

 髙石あかりは夏映画『新米記者トロッ子』で知った。不正にまみれた学園の闇を暴くスクープを連発する新聞部の部長役を演じ、新米部員の藤吉夏鈴に寄り添う姿が格好良かった。

 髙石への興味で〈水ドラ25〉を観だしたら、まひろ役の伊澤にも目が釘づけだ。伊澤の拳銃、ナイフ、とりわけ格闘術の速度と打撃、繰りだす技の比類ない美しさに圧倒された。

 殺戮から帰還したまひろの顔を見て、ご飯を作っていたちさとが「血? 大丈夫?」。「返り血だから大丈夫」とボソボソ答える。死体の処理はと訊かれ、「トン汁の美味しい匂いがして、そのままにしちゃったぁ」と答えるまひろが可愛く、そのギャップに笑う。

 伊澤はスタントパフォーマー。格闘シーンが本職だけど、演技も巧い。やる気のない小声で、立ちはだかる男の関節をキメちゃう。

 アクション。笑い。女の子二人の友情。異質な要素が絶妙に絡み合う奇跡のドラマだ。映画版は最強のヴィラン(敵)を池松壮亮が演じる。池松くん、プロの伊澤に負けじと応ずる姿が魅せた。『シン・仮面ライダー』の数倍の迫力だ。

 ポップでファンキーな映像と世界観。そしてキュートで勁(つよ)い「ちさまひ」に、深夜どっぷり浸っている。

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『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』
テレビ東京 水 25:00~
https://www.tv-tokyo.co.jp/babywalkure/