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5日で終わった移住生活のワケ

――5日で東京に。何があったんですか?

神野 いろんな理由があったんですが、ここでは生きていけないなって思ったことがいくつかあって。ゴミ出しが当番制になっているような集落で、引っ越すときに全員に挨拶に行って、隣近所に誰が住んでいるのかわかるようなところで。そこは覚悟の上で行ったんですが、自分の存在がなくなるような気がして。

 どこに挨拶に行っても、彼の話は聞かれるけど、私に対しては一切聞いてこないんです。夫に付いていった専業主婦の妻、みたいな感じで、私が何の仕事をしてどうして引っ越してきたのかは聞かない。だから、ずっと彼の付属品のような感じがして。

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――神野さんのアイデンティティがないような感覚に。

神野 そうですね。自分の今までの経験とか、プライドを持って仕事をしてきたこととか、全部ないものとされるというか。あくまで彼がメインで私はサブでしかないみたいな気持ちになってしまって。もちろん元AV女優という過去にむやみやたらに触れられるのも嫌ではあったんですけど、何も聞かれないのはそれはそれでどうなのかなって。

「自分って何しにここに来たんだろう?」って思いました。人として扱われないというか無力なんだって思い知らされることがすごく怖くなってしまって。じりじりと自尊心が削られてしまいました。

 

――神野さんはご実家が宮城県ですよね。ご実家よりも田舎だった?

神野 実家と同じくらいの田舎だったと思います。ただ、実家暮らしの時は、子どもだったので、そういう気持ちを感じたことがなくて。子どもだった自分には見えていなかった街の顔があるんだなと思い知らされましたし、もしかしたら母は感じていたのかもしれないなと思って。

近所の人との距離感になじめず、孤独を感じて

――その他にどんなところが大変でしたか?

神野 距離感ですかね。近所のおじいちゃんが急に庭に訪ねにきたり。何か目的があるわけではないと思いますが、気づいたら庭にいて。東京ではそんな経験をしたことがなかったので、ギャップを感じました。

 

 あとは東京にいた時と同じことをしていても時間が余るんですよね。友達と会うとか、ジムに行くとかそういう時間がなくなったので、その分どうしようかと思うんですけど、何もやることがない。料理をして犬と遊んでもまだ時間が余る。夜8時にはもう暗くなってみんな寝るんですよ。だから余計孤独を感じるというか。

 東京はせわしくて、人が多くて、眠らない街で、そこが生きづらくもあるのかなと思っていたんですけど、むしろ東京のその部分に助かっていたというか。東京にいると暇とか孤独を感じづらくなるんですよ。一歩外に出れば、何かしらあって、その中にいることで安心できる。