――地方は自分が孤独なことが感じやすいと。
神野 そうです。それと自分の経歴が万が一バレてしまった時に終わるなと思って。誰か一人が知って、それが集落中に回って、噂されて、村八分のようなことになったらどうしようとか考えて。その恐怖を感じながら住み続けるのは精神的にあまりよくないなって。
5日目の朝に彼との関係も終わらせて
――住んでみて初めてわかったと。
神野 そうですね。正直、覚悟が足りてなかったと思います。場所が変われば新しい自分になれるって心の中で思っていたけど、新しい環境に行くということがそんなに簡単じゃなかったというか。
泊まるのと、住むのは全く違うんだということを改めて感じました。何度その土地に通っていても、やっぱりここにしか家がないという状態で移住するのは全然違う。
東京まで1時間半くらいで帰れる場所だったんですけど、東京がすごく遠く感じたんです。友達にも簡単に会えない、気楽に話せる人もいない。
――ちなみにパートナーとの関係は?
神野 私が移住3日目くらいにさすがにキツイなと感じて、色々話していくうちに彼との関係も悪くなってしまって。5日目の朝に関係を終わらせて、とりあえず数日分の着替えをキャリーケースに詰めて犬と家を飛び出しました。
家を出たのはいいけど、タクシーも走ってないんですよね。駅まで徒歩20分だったので、荷物と犬を背負って駅までひたすら歩いて……。
写真= 佐藤亘/文藝春秋