瑠美さんは、早速書いてあることを実践してみたところ、明らかに基次さんの怒りの爆発の回数が減った。
効果を実感した瑠美さんは、本に書いてあることを実践すると同時に、自分自身を捉え直していくことにも取り組んでいく。
すると、自身には以下のような特徴があることに気づいた。
・空気を読みすぎる性質
・自分よりも周囲を重視
・自分なら解決できるという慢心
「我ながら、モラハラをする人間にとって、都合のいい性格をしていますよね」
瑠美さんは、「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えることが出来る」「乗り越えられない困難は与えられない。きっと乗り越えられる」と思い、自分自身を変えようと決意。それと同時に、これまで基次さんから度々「多分俺は発達障害だと思う」と聞かされてきたものの、しっかりと受け止めてこなかった自分を反省。発達特性についての勉強をスタートした。
「実はあなたとの離婚を考えていた」
基次さんの話に戻そう。
やがて、結婚から1年ほど経った頃、2人でお笑いのライブを見に行った帰り道で、基次さんは瑠美さんが笑っている顔を久しぶりに見た気がして、こう言った。
「何か悩んでいたの?」
すると瑠美さんは答えた。
「あなたのことで悩んでいて、精神的な疲労からカウンセリングも受診したし、実は離婚を考えていた」
基次さんは、いつものようにマグマのような怒りが湧き上がるとともに、絶望を感じた。
「言われた瞬間、妻のことを気にする余裕なんてなくなり、パニックになっていました。ただただ受け入れられず、ショックを受けて、次に怒りが湧いてきました。この怒りは、妻のために自分なりには頑張っていたのに、何で非難されないといけないのかという思いからです。当時の自分は本当に自己中心的だったと思います」
それから1ヶ月ほど経った頃、ようやく基次さんは、「俺は一体、何をしているんだ」という反省の気持ちと、心の底から瑠美さんに対して申し訳ない気持ちになった。
「僕は『何のために身を粉にして頑張っていたのか』と自問しました。結婚当初は『妻を幸せにしたい』『妻に良い暮らしをさせたい』という一心だったのに、結果的に愛する妻を傷つけて、離婚寸前まで追い込んでしまいました。ここは何としてでも、『自分が改心しないといけない』『妻がくれた最後のチャンスを、絶対に無駄にしてはいけない』と思い、本気で自分の問題と向き合う決意をしました」
この時から基次さんは、“モラハラ加害者体質”である自分を変える努力を開始した。