カサンドラ症候群で共依存状態
「夫からモラハラを受けていた新婚当初は、全て夫の思い通りにいかないと機嫌を損なう状況でした。はっきりとした暴言というものはほとんどなく、今で言う“フキハラ(不機嫌ハラスメント)”で、全て夫が正しい=私が間違っているという図式にされるため、頭がおかしくなりそうでした。私が100%悪いことを前提に話されたり、年齢が一回りも上で、社会経験も長いという事実などを織り交ぜて冷静に説教されたりすると、『私が間違っているのかな?』とケンカのたびに思わされてしまっていました」
母子家庭で育った瑠美さんは、結婚するときに母親や姉、友人たちに家財道具をプレゼントされた手前、結婚半年で実家に帰ることはできなかったが、とりあえず区役所の無料カウンセリングを受けてみることにした。
するとカウンセラーから、
・夫の行為はモラルハラスメントであること
・瑠美さんはカサンドラ症候群で、共依存の状態にあること
を告げられ、離婚か別居を勧められた。カサンドラ症候群とは、発達障害を持っていたり、共感性が低かったりするパートナーや親しい人などとのコミュニケーションに悩み、心身に様々な不調が現れる状態のことを指す。
しかし瑠美さんには違和感があった。カウンセラーのアドバイスは理性的なものだったが、夫婦なのですぐに割り切れるはずもなく、躊躇してしまった。
「夫は本当に、そこまで悪い人なのでしょうか?」
そう質問すると、カウンセラーはさらに以下のように説明した。
・共依存状態に陥っているから正常な判断ができなくなっている
・モラルハラスメントは自己愛なので治らないから離れたほうがいい
「今考えると、確かにカサンドラ症候群の状態で、思考は鈍くなっていたと思いますし、共依存状態であったと思います。ただ、当時の私にとっては、突き放された言葉に感じ、『やっぱり私がおかしいのか?』と、責められている気分になりました」
夫の特性、私の特徴
瑠美さんは基次さんのモラハラ行為を振り返ってみた。
・基次さんがイライラしている時、しばらくそっとしておくと、「放置された!」とキレ出す
・夫の心を慰めない態度を指摘・叱責され、離婚や別れを匂わされる
・時間が経過すると軽く謝罪され、アドバイスだったと言われ、こちらに反省を促される
「『夫が私を楽しませようとしている時や、自分が楽しみにしている時』『はじめて経験することや、慣れていなくて自信のないことをする時』に、このような“自分が正しいと証明するまで静かにキレ続ける事態”が起こっていることに気付きました。そこで、図書館へ行って調べてみたところ、発達障害の子どもに対する母親の支え方が書かれている本を見つけて、『めっちゃ夫のことだ!』と思ったんです」