エリート会社員という安定した立場を捨て、好きなことを仕事にする人がいる。プロマジシャンのCOZY氏(32)もその一人だ。
新卒で入社した大手企業を退職し、千葉県で“山籠もり生活”をする苦境に陥っていたCOZY氏。当時の暮らしぶりと、それでもなぜマジシャンの道を諦めなかったのか、話を聞いた。(全2回の2回目/最初から読む)
会社員とマジシャンの“二足のわらじ”で上司が激怒
「『お前、仕事に全然気持ちが入っていないんだけど』と先輩から怒鳴られたこともありました。取引先のエントランスで上司に叱責されたこともあります。たしかに仕事よりもマジックを優先していた自分がすべて悪いんですけど、みんなにジロジロ見られるしキツかったですね」
とはいえ当時のマジックでの稼ぎは会社からもらう給料の3分の1ほど。会社を辞めてマジシャンとして生計を立てられる状態ではなかった。
「それでも、マジシャンになることに気持ちは完全に傾いていました。結局、入社2年目で『マジシャンになります』と言って、辞表を出しました。上司は引き止めるよりも、びっくりしてましたね。噂はすぐ広まり、他部署の人にまでマジシャンになるために辞める人、として認知されていました」
上場企業を辞めて、マジシャンになる。これまで安定志向だったCOZY氏の変化に、周囲はどんな反応をしたのだろうか。
「両親は『そこまで言うなら頑張りなさい』というスタンスでしたが、周りからは『せっかくの順調な人生がパーに……』と言われたこともありました。付き合っていた彼女ともマジックの練習が忙しくて別れてしまいましたが、それでも自分の中では迷いや後悔はありませんでした」
とはいえ、すぐにマジシャンとして生計が立てられたわけではない。