SNSやブログなどで、誰もが情報発信の可能な時代。一人でニュースを発信することの可能性とリスクとは何か? ブロガー・山本一郎さんと、ジャーナリスト・井上理さんによる対談後編では、「なぜ個人で書き続けるのか?」をめぐって。(4月24日に開催されたイベント「#メディアミートアップ vol.6:一人のメディアはどこまで行けるのか」より抄録。司会は徳力基彦さん/全2回の2回目・前編より続く)

左から山本一郎さん 、井上理さん、徳力基彦さん

書くエネルギーのスイッチが入るときは?

徳力 ブログは結局のところ、掲示板(BBS)と記事が混ぜあわさった初めてのツールだと思いますが、山本さんも読者からのフィードバックは気にされているんですか。

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山本 反響があるなしよりは、自分自身にそれを知りたいという欲求があるかないかです。手あたり次第に調べていくことに生きている感覚があるというか、知りたいことがわかった時点でじつは満足なので。実際どれだけ調べて記事を書いても、書かないことのほうにこそ、じつは真実があって、取材先の方の人間味や本音、考えていることが含まれている。それを自分のなかに蓄えておいて、似たような構図の次の事件とか別の関連事項に生かすことを繰り返すことで初めて、そこで書き手としての力が養われるんだと思います。

徳力 書くエネルギーのスイッチが入るときは?

 

山本 社会問題化したあと、もしくは問題化しかけそうなときですね。だけど自分の調べられるエリアは決まってますので、そこで発生するのが情報のバーターです。欲しい情報に詳しいひとと交換できる情報を自分がもっているかどうか。

徳力 これは記者とは真逆の思考回路と思っていいですか。

井上 どちらかというと、山本先輩はインテリジェンスのほうのひと。これあげるから、それをくれというのは、世界中のスパイが何十年とやってきている、まさに情報の等価交換という不文律です。

 

ポジティブにバズッた原体験

徳力 井上さんの情報発信が現在のスタンスになるきっかけのような記事はありますか。

井上  2009年に、コロプラという会社の位置情報サービスを利用したゲームアプリが革命だと思って取材を進めていくと、九州の有田焼店の60か70歳ぐらいのご店主が、コロプラのおかげで若いお客さんがすごく増えたと言って目の前で泣きはじめたんですよ。地方で一所懸命やってきたおじいちゃんに喜びを与え、ゲームユーザーもそれを楽しんでいるという、すごくWINWINな仕組み、こういうことはちゃんと伝えていくべきだと思いました。馬場社長にもインタビューできてうまくストーリーにできたので、すごく、しかもポジティブにバズッた。それが今のスタンスにつながる原体験のひとつですね。