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――楳図さんは「子供」、「少年・少女」を描き続けてらっしゃいますが、『わたしは真悟』を含む後期の作品は、青年誌で発表されているんですよね。「だからこそ子供を描くんだ」と主張され、子供がテーマの作品を描き継いでいらっしゃった。一方で、私が『わたしは真悟』を最初に読んだのは18歳ぐらいなんですが、あの作品はある程度年を重ねないと真のすごさが分からないものだとも思うんです。楳図さん自身は、子供をテーマにした作品を同世代の子供に読んでほしいという思いが強いのか、むしろ大人になってしまった人間たちにもあるはずの子供性を狙って描かれているのか、どちらなんでしょうか。

楳図 子供が読んで内容を理解してもらうというのはちょっと難しいと思うんですね。昔子供だった大人の人たちに、「ああ、私たちもあんなようなことはあったねえ」というふうな見方をしていただいたほうが、素直に作品を見てもらえるかなと思うんです。

 どうして青年誌でも子供をいっぱい描いたのかというと、子供が出てくる話のほうが、僕にとっては気持ちがいいんですね。子供って大人よりは動きは活発だけれども、ヘンな常識とか権力とかがない。どんなにバカバカしいことが起きても、「いや、ほんとだねえ」とか、「そんなのあるの?」とかって乗ってくれる。大人を描いていると、その登場人物自体がもう僕に向かって「私にあんまりちょっかい出さないで」と言っているような感じに見えてくるんですよ。「好き勝手言わないでください」とか、そんなふうに見えてくるんですね。

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 現実では起こらなそうな、飛躍した話を描くには子供が出てくるほうがいい。そういう意味で、僕のお話作りの基本は、おとぎばなしとか昔話とか、そこなんだろうなぁと思うんです。